2.召喚された莉葉と最弱魔法使いルナとの出会い

 周りをきらめく光が一瞬にして消え去り、目を開けると、私は深い森の中に立っていた。


「ここは一体……?……誰?」


 私がいる視線の先には先端が鋭く尖った杖と古びた本を両手に持つ。見た事もない制服を着込んだ女の子が立っていた。

 

 金色に輝く短髪、真紅の瞳、見た感じ年齢は私と同じくらい。


 青いブレザー、白いワンピースに赤いリボン、何の模様もない白いスカート、少女の制服は明らかに私が着ている制服とは、全く違う。

 

「「……」」


(そうか、この子は……)


 目の前の金髪少女は何も喋らない。それに対して、私は杖を持っている少女をじっと見つめながら、魔法使いだとそう思った。


(……取り敢えず、周りを確認しよう)


 しかし、何を話せばいいか、分からない私は周囲を見渡しながら、状況を確認する事にした。


 見たこともない種類の草木や花、私が住んでいた世界にはない薄暗い森と杖を持った金髪の少女。


 つまりここは魔法のある異世界だ。私の願いが叶ったのだ。


「…とても嬉しい」


 この嘘の様な状況に、私は喜びと嬉しさを噛み締めながら、木に遮られている見づらい空を見上げる。


「…でも、喜んでばかりもいられない」


 と喜びに浸っていた私は前を向く。


 そして、どうしてこの世界に来てしまったとそう思いながら、理由を知っていそうな目の前にいるこの世界の住民と思われる魔法使いの金髪少女に話しかける。


「……あのう」


「!」


 私が口を開くやいなや、驚いた表情の金髪の少女は眼を見開き、古びた本を閉じるとすぐに杖をベルトのホルダーに入れ、冷静な表情を作り、金髪少女は話しかけてきた。


「あっ、あなたは誰? 見た事もない服を着ているけれど……」


「えぇっと、私は高波莉葉といいます……」


「タカナシリツハ?……聞いた事のない名前。何処から来たの?」


 そう敬語で自己紹介をした私に対して、金髪の少女は目を丸くしながら、私に質問し、その答えに分からない顔をしながらこう返した。


「……うーん、分からないわ。神社から出て行こうとしたら、いきなり魔法陣みたいな物が現れて、私はその光に包まれて、目を開けたらここにいたの……」


「……神社って何かはちょっとわからないけど、莉葉さんが言うには、魔法陣みたいなものが現れて、その光に包まれて、目を開けたらここだったってことだよね?」


 金髪少女は少し不安そうな表情をしながら、そう聞くと私はゆっくりと頷いた。そしたら、金髪少女は何かを思い出し、深く落ち込んだ表情を見せ、私に顔を向ける。


「そんな、まさか……」


 と古びた本を落とし、声を押し殺しながら、金髪の少女の顔を引き攣りながら、ゆっくりと地に座った。そして、彼女は落ち込んだ表情のまま私を見つめ、再び口を開いた。


「私は…もしかして別世界の人間を召喚してしまったの? もし、そうだとすれば、私は取り返しの付かない事をしてしまった……」


「えっ? 取り返しのつかない事って……?」


 金髪少女が言っている事が全く理解できない表情を浮かべている私に対して、金髪少女は落ち込みつつも冷静さを保ち、恐る恐る異世界から来た私の名前を再度確認し、私が暮らしている町には魔法がするか問いただした。


「……あの、あなたの名前、莉葉さんでいいんだよね?」


「うん」


「……あなたが住んでいる町には魔法はあるの?」


「いいえ、私が住んでいる町には魔法なんて存在しないわ」とそう応えた。


 やっぱりと瞬時に考えた金髪少女はまた落ち込んだ表情を見せ、座ったまま、下を向きながら少し涙を見せた。


 そして、金髪少女は私の方を見つつ顔を上げ、かなり落ち込んだ表情を浮かべ、涙ながらに深く頭を下げて謝ったのだった。


「ごっ、ごめんなさい」


「えっ、何?」


 突然、金髪少女に謝罪された私は理解が出来ず。戸惑いを見せる。


 そして、金髪少女の流していた少し涙が多くなり、顔が崩れるくらい落胆し悲痛な感情を抱きながら、また。謝ってきた。


「くすっ、ただ、私はこの本に書かれていた召喚の書を試しだけなの。まさか、別の世界の人間を召喚してしまうなんて、思っても見なかった。本当にごめんなさい」


「本って……その薄っぺらいの……?」


 と金髪の少女が古びた本を指を指した。そしたら、泣きながらうんと頷いた。


 へぇ、そんな本があるんだと私は内心喜んだ。何故なら、異世界に行ってみたいと思ったから……。


 しかし、金髪少女は私を召喚した事をかなり後悔している。元の世界に帰れないから、いや帰る必要はない。だって、前の世界はつまらない。この世界に来れて私は嬉しく思う。


「……そんなに落ち込まないで、私は気にしていないから……。むしろ喜んでいるわ。異世界に来られたのだから……」


「えっ、本当に……?」


「あぁ、本当よ」


 私は後悔している金髪少女の頭をゆっくり撫でてやり、大丈夫と声をかけ、そしたら、金髪少女は胸を撫で下ろして、持っていたハンカチで涙を拭い、私に向かって笑顔を向けた。


「あっ、ありがとう。莉葉さん」


 初めて会った金髪少女にお礼を言われて少し照れながら、笑顔を向けて左手を差し出して、私は少女と握手を交わした。


「さんはやめて、私の事は莉葉でいいよ。これからよろしくね」


「はい、莉葉。あっ、そういえば、まだ名乗ってなかったね。私は魔法学園の一年、ルナ・アルナ15歳、こちらこそよろしくね。莉葉」


 ルナと一緒に差し出した手を握り、握手を交わし、落とした古びた本を拾った。その後、私はこれからどうするかをルナに聞く事にした。


「それでルナ、これからどうするの?」


「……うーん、そうだね。まずは魔法学園のハクア理事長に相談かな。この召喚の書の事もあるしね」


 ルナは異世界召喚させてしまった私の事を魔法学園のハクア理事長に相談し、古びた本の事を調べてもらおうと考えた。


「ねぇ、ルナ。魔法学園のハクア理事長って、どんな人なの……? 」


 魔法学園のハクア理事長がどんな人か知らず、少し興味が湧いた私は、ルナに聞いてみる事にした。


「ハクア理事長は魔法学園一凄い強い魔法使いなんだ。なんたって六属性で最強の魔法使いだから……」


「へぇ、そうなんだ」


 自慢げでいうルナに私は魔法学園の理事長の何が凄いのか分からない顔をして、六属性で最強の魔法使いってものがどんなの凄い力を持っているのか気になった私はルナに聞いてみる事にした。


「ねぇ、ルナ。最強と言われている六属性の魔法使いって何?」


「あっ、そっか知らないよね。」


「うん」


「…じゃあ、この森を抜けてから私が通う学園に向かいながら話すね」


 そう森を抜けてから、魔法の事を教えてくれると言ったルナにお願いしますと私はそう返した。


「じゃあ、行こう。莉葉」


「うん、ルナ」


 そして、私とルナ共に魔法学園がある場所向かって。森の中をまっすぐ歩いて行った。しかし、その道中でとてつもない魔物に襲われるなんて私達は知らない。

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最弱魔法使いと異世界召喚された規格外魔法使いの学園録 東明時裕夜 @jgdwmd53

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