2.謎の魔獣使い、現る。
ルナが召喚魔法を行っている中、貴族令嬢のシルフィーナとその取り巻きであるアイナとレイルはハーウェトの森で薬草を探しながら、楽しく会話をしていた。
「また、やってやりましたの、お姉様」
「何ですか?アイナ」
「今日も平民を虐めてやりましたの。レイルと一緒に……」
クスクスと悪意に満ちた顔でいうアイナにシルフィーナは爽やかな笑顔を向けてこう返した。
「うふふ、そうですか……」
そして、アイナは何か思い出した顔をしてシルフィーナにこう言った。
「そういえば、お姉様。今年の魔法決闘祭に参加するってほんとですの?」
「えぇ、ほんとですわ。」とやる気十分な笑顔を向けて、シルフィーナはそう答えた。
魔法決闘祭とは年に一回行われる火、水、氷、雷、風、土の六属性魔法の力で攻撃し防御したり、魔法の力と力とぶつけ合う大会である。
どうやら、シルフィーナは魔法決闘祭に出るらしい。
それを聞いた二人は仄かな笑みを浮かべながら、シルフィーナに対してこう返した。
「そうなんですね。」
「きっと、シルフィーナお姉様なら、魔法決闘祭はいい結果残せますよ」
「そっ、そうですね……」と返したシルフィーナにどこか浮かない表情を浮かべていた。それに気づいた二人は心配そうな表情を浮かべた。
「どうなさったの? お姉様。浮かない顔をして……」とアイナはそう尋ねるとシルフィーナは浮かない顔をしながら「ちょっとね。」と返した。
シルフィーナは同じ五属性の魔法使いでありながら、剣聖である自分の兄が魔法兵団と共に王国近くのカルム領で大暴れしているカオス闇団との戦闘に参加していることを心配していた。
カオス闇団とは正体不明の団リーダーでもある狂神カオスによって、作れられし組織。
目的は暴れる事以外一切不明。魔法王国の魔法兵団が手を焼いている存在。
そして、狂神カオスは後に最弱魔法使いと異世界人と戦う事になるがそれはもっと先のお話である。
心配に思っていたシルフィーナだったが、急に怪しい気配を感じて立ち止まった。
「あっ、待ちなさい。アイナ!レイル!」
「えっ、何ですの?」
「どうしました、お姉様」
「そこの茂みに何かいるみたい……」
「「えぇ」」
近くの茂みに何かいると感じ取ったシルフィーナは持っていた杖を手に持って構えて、それを見たアイナとレイルは少し戸惑いつつも、持っていた杖を構えて、三人は一体となって攻撃体制を取る。
「そこにいる者出てきなさい」とシルフィーナは杖を構えながら茂みに向かって言った。
そしたら、黒いフードを被った黒いオーラを漂い、邪悪な笑みを浮かべている目にクマがあり、顔色が悪そうな紫髪の女性が茂みから出てきてその姿を表す。
そして、茂みから出て来た紫髪の女性はシルフィーナ達を見て不気味な笑みを浮かべて答えた。
「うふふ、私の存在に気付くとは……。流石、魔法学園の生徒だね」
「何者ですか? あなたは……」とシルフィーナは警戒心を持って尋ねようとした。
そしたら、紫髪の女性にまた不気味な笑顔を向けてこう答えた。
「私が何者か? あなた誰か?それはどうでもいい。私の可愛い魔獣達に食われて、死になさい少女達よ……」
「魔獣ですって……」シルフィーナは険しい表情を浮かべながら、紫髪の女性の声に反応した。
紫髪の女性は一本の黒い杖を取り出し、地面に振り下ろすと、不思議な光と共に複数の魔法陣が現れる。
「まさか、これは闇の召喚魔法?」とシルフィーナは声を震わせながらそう呟いた。
そして、魔法陣の上から現れたのは耳の長く、足が4本ある黒く毛深い身体をしている。鋭い目つきと人の腕を噛みちぎりそうな、牙を持った獣達だった。
『ガルルル、ガルルル』
シルフィーナは獣達を見て知っている顔をして紫髪の女性に質問した。
「くっ、こいつらはブラッドウルフですか?」
「うふふ、そうよ。」と紫髪の女性は不気味な顔し微笑みながら、そう返した。
三人は状況を理解して、ブラッドウルフ達との戦いに身を投じて、魔法を唱える準備を整えて、杖を構える。
「アイナ!レイル!戦闘訓練はやってないですけど、やりますわよ。」
「「はい、お姉様」」
「私達を敵に回した事を後悔しなさい」と言ったシルフィーナは自信満々な笑顔を見せて、アイナとレイルの三人は呪文を同時に唱えた。
「「「
三人が同時に同じ魔法を唱えた瞬間、まるで銃みたいな感じの速さで火の玉が杖から連続発射されて、ブラッドウルフ達に向かって飛んでいく。
しかし、ブラッドウルフ達は空高くジャンプしながら、軽々と彼女達の火の魔法攻撃をかわした。
「かっ、かわされた。中級魔法の攻撃なのに……」とシルフィーナとアイナとレイルは、魔法をかわされて、悔しいそうな表情を浮かべ、顔をしかめる。
そして、かわされた火の魔法攻撃はそのまま後ろにいた紫髪の女性に当たろうとした。しかし、女性は軽く杖を振り、呪文を唱えていないのに風を発生させて火の塊を打ち消した。
そして、ジャンプしたブラッドウルフ達はその
まま襲いかかって、間合いを詰めて口から炎を吐こうとした。
「あっ、危ない!」と思わず、叫んだシルフィーナはアイナとレイルを守る為に魔法で透明な四角い壁を作り出した。
「透明な壁よ現れよ
壁が現れると同時にブラッドウルフ達は口から炎の玉を吐き、透明な四角い壁に当たり、その衝撃は少しだけシルフィーナに伝わっていた。
「くっ、」
「大丈夫ですか。お姉様」
アイナが心配そうに言うが、シルフィーナは笑顔を向けてそう返した。
「えぇ、なんとかね。アイナ!レイル! あなた達は先生を呼んできてください」と防御魔法を貼り続けているシルフィーナはアイナに先生を呼ぶ様に頼もうとした。
「でも、姉様」とアイナは言葉に言葉に詰まった。
シルフィーナはアイナを見つめて、向けて力強く言い放った。
「行って!早く!」
シルフィーナの強い言葉に促されたアイナは少し心配しつつも仕方なく頷き、レイルと共にここから離脱して先生を呼ぶことにした。
「分かりました。行きますわよ。レイル」
「えぇっ、でも……」とレイルは言いかけるが、アイナが無理矢理を引っ張って行き、軽くシルフィーナを見つめた。
「お姉様、すぐ戻って来ます」
「えぇ、頼むわ」
そして、アイナとレイルはここから離れていき、その後、彼女らを見た紫髪の女性は軽く薄い笑みを浮かべてこう言った。
「うふふ、お仲間さん達は逃げましたか? でもたった一人でいつまで耐えられるかな」
「うっ」
ブラッドウルフ達の攻撃は凄まじく、なんとか防御魔法で防いでいるが、シルフィーナの体力は次第に消耗しきっている。
その時、紫髪の女性はニヤリと悪い笑みを浮かべてこう言った同時にブラッドウルフ達は火を吐くのやめて動きを止めた。
「……うふふ、おっと、そろそろかな?」
「えっ、何……?」
シルフィーナは驚きながらも固まり、彼女はブラッドウルフたちが何故止まったの理解できず、戸惑い見せる。
すると。動きが止まったブラッドウルフ達の少しずつ身体が膨れ上がってきた。
シルフィーナはそれを見て何かを察したのか恐怖に震えながら、思わず口から漏れた言葉が途切れた。
「まさか、これは……」
そして、紫髪の女性は左手で顔を隠しながら、高笑いをしながら、邪悪な笑みをシルフィーナに向けてこう言った。
「はははは、残念だったわね。私が召喚したブラッドウルフ達には事前に時限式で爆発する魔石を入れてあるのさ」
「そっ、そんな……」 とブラッドウルフ達が爆発すると聞かされて、絶望感を味わい、シルフィーナはうっかり防御魔法を解いてしまった。
「しっ、しまっ……」とシルフィーナが声を詰まらせる事もなく、ブラッドウルフ達は爆散し、シルフィーナはその爆風に巻き込まれた。
「終わりましたか。飛んだ時間を食いましたけど、ささっとカオス闇団の所へ向かいますか」とそう言って、目的を達成した顔をして紫髪の女性はこの場から姿を消した。
そう呟いた彼女の正体が何者で、カオス闇団とは一体、何の関係があるか、誰も知らない。そして、目的も一切不明。しかし、その目的が莉葉達をも巻き込む世界危機に発展するなんて、今の彼女達は知らないのであった。
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