想い出の断片

想い出の断片

イカ焼きと いちごシロップ 雲の峰

あの子ゐる ラジオ体操 皆勤賞

遠浅を どこまでも行く 夏休み

狛犬（こまいぬ）の 右で待ちわぶ 藍浴衣（あいゆかた）

朝散歩 社務所の庭の 牡丹かな

雨だれや 窓辺に馨（かお）る フリージア

夏の月 愛（いと）しきひとの 眸（め）にふたつ

初雪や 人肌（ひとはだ）呑みて 頬を染む

菊の香に 抱かれて夢寐（むび）に 恋したる

藻の花の 深きに永眠（ねむ）る オフィーリア

喧嘩して 珈琲（コーヒー）の香や 秋更（ふ）くる

百日紅（さるすべり） 老犬撫（な）でる 老爺（ろうや）をり

故郷（ふるさと）の 想ひ出遠き 茄子（なす）の花

雨宿り 庭の隅をる 四葩（よひら）かな

恋ひとつ 熟柿（じゅくし）の如く 落ちにけり

笑ふ父 居間を温むる 秋の暮

蕎麦（そば）食ふて 名残の空を 見てをりぬ

勇壮の秋 麦屋節（むぎやぶし） 笠踊（かさおど）り

背番号 「17」見たき 夏の月

偽りは 嘘より淡き 木槿（むくげ）かな