第7話 寺子屋へ

なんだかご満悦な一信が帰宅すると

さっそく両親に報告する。

「そりゃぁそうさ。胸ぐら掴まれて大泣きなんて、これからそんなんじゃ和尚に棒で尻を叩かれるぞ!」っと父親も母親も笑いながらそして決心のついた事を聞き、

「明日にでも和尚に報告に行こう。

どうする?1人で行くか?俺がついていこうか?」っと試すように聞くもんだから、

母親が「おとうさん?決心つけるのにもこの子にしたら大変だったんだから、嬉しい事とはいえ、いきなり厳しくしてはだめですよ?ついてってあげなさいよ?」とすかさず

一信を構った。しかし一信は、

「いや、おとう!僕は、1人で行くよ。和尚とは、あまり話した事ないけど、自分のことは、自分で言いたい。」と言うのだった。

父親は、いじめるつもりで言ったわけではなかった。どっちにせよついて行ってあげるつもりで、和尚の条件通りに本気かどうかを尋ねたのであった。一信は、真面目な性格だから、ちゃんと返答をするのを分かっての質問であった。「うむ。ならしっかり挨拶して決意を伝えてきなさい。その後のこともちゃんと聞いて帰ってきなさい。友達たちにもちゃんと伝えるのだぞ?」っと告げた。


一信は、夜

寝床で今日を振り返っていた。

友達があんなに自分の事を想ってくれて

いた事。自分の進みたい道の門が開かれた

事。そして自分の決心がついた事。

「はは、、でもやっぱ緊張するなぁ。

和尚さん怖いって噂だし。ほんとに棒で尻叩かれたら。うーん。明日にはわかるさ。寝よう。」


・・・夢 ・・・

いち・のぶ!

だれ?

わたしだ。

・・・

月の神だ。

月の神?

まぁわからないのは仕方ない

・・・

そなたの友達は、同じ。

どう言う事?

他の世の・・・同じなのだ。


〜〜〜朝〜〜〜ちゅんちゅんちゅん

鳥の囀りで、目が覚めた。

(なんか不思議な夢だったな。誰かが僕を知ってて、友達がどうちゃこうちゃらで他のなんちゃらが同じ?わけわかんないや)


まぁいっか!

おかぁ!朝ごはん!

「はいはい、今日お昼の約束でしょ?

昨日寝言言ってたわよ?ちゃんと寝れたの?」


あ、寝言言ってたのか。

気になるけど、まぁいいや。


ごちそうさまぁ!

「ちょっと一信!これに着替えなさい!

いつもの泥だらけの服来てお寺さん行くつもり?」

母は、普段着は、ボロボロになっても

つぎはぎを縫っては、一着しか渡さなかったが、一応何かある時のために、綺麗な衣は、

用意されていた。

「あぁ、そうだね尻叩かれちゃうねいきなり。着替えるよ。ありがとう。」

「それとこれ、和尚さんへの手紙。会ったら渡してちょうだい」

「うん、わかった!」


やがて昼前に

「じゃ行ってくるよ!父さん仕事?」

「うん、あんたが1人で行くっていうから休むわけないでしょ!さ!礼儀を忘れずに!いってらっしゃい!」


そして、綺麗な身なりに整えて

胸元に手紙を入れて、そう遠くないとはいえ

徒歩では、30分程かかるところなので、

道中服を汚さない様に気をつけながら

下駄をカラカラ言わせながら、

寺へついた。門はいつでも昼間は開かれていて、門をくぐると正面が本堂で、奥にはお墓があり、本堂の隣のお堂に和尚が寝泊まりする所があったので、そこに行けば会えるだろうと和尚を探すがどこにもいない。

「あれ?お昼の約束をおとうがしたって言ってたんだけどな?」っとウロウロしていると、いきなり「おまえが一信か」と背後に気配も無しにドキッと!驚いて振り向くと、ム!っとした顔の和尚が立っていた。

「あ、あの!はい。そうです!本日、勉学の件で、あ、あの決心がつきました事を、ほ報告にあがらせてもらいました!」

すると和尚が

「はっはっはっは、ワシが少し寺を離れてある間に勝手に上がっておいて、面白い事を言う。わーざと門の影に忍んでやったわい」

そのとおりだった。

いきなり突っ込まれてしまった。

門から本堂とお堂は、丸見え

昼間に境内に居ないのなら

外にいるのは、知っていた。

なのに勝手に上がって

上がらせてもらいましたって。

いきなり和尚の知恵のゲンコツを

くらってしまい。

恥ずかしくて顔が真っ赤になってしまった

一信は、「すみません!」っと一言。

和尚は、「いやいや、ワシのいたずらじゃ

礼儀がよいのぉ!感心感心!、言わずもがなここに1人で来たと言う事は、決心の現れ。よくぞ参られた。まずは、本尊に挨拶せよ。話はそれからだ。」っと

本堂へあげられ、和尚の真似をし本尊に合掌をした。

「いよし。これでご本尊様もおまえがここにいてよい、ということだ。さお堂へお上がり。もう緊張せんでよい。」

急に優しくなったので、まだ緊張は、解けなかったが、まず両親からの手紙を渡した。

和尚は、それを読み終えると、

桐箪笥の中へ大事に閉まった。


「和尚様 


この度、私たちの息子の一信の勉学への手助けの術を考慮して頂き誠に有難う御座いました。一信は、まだ7歳で一信なりの葛藤があった様で、友達と離れ離れになってしまうのでは、と悩んだ様でありました。しかし一信は、良き友に恵まれた様子で、その悩みは、ふっきれたようです。昔から月を見ては、ぼーっと眺める不思議な所もありまして、年頃のせいもありますが、それでも人一倍関心事が多い、そしてよく吸収できる子であります。

どうか、よろしくお願いいたします。


それとまだ幼年の一信でありますから

正直申しますと、親としては頼んでおいて

とても心配でございます。


重ね申し上げますと

何卒よろしくお願い申し上げます。」


とのことであった。


和尚は、噂では棒で尻をひっぱたく人だ

と言われていたが、それは、大人が子供に

年長者には、礼儀を正せという子供騙しであったのだ。


この和尚は、さきほどのように

いたずらのようなとぼけた所のある

本来誰よりも優しく懐の広い方であった。


でなければ、ただでさえ

お寺の事で手一杯の忙しい和尚が

出家してくるでもない子供に対して

わざわざ勉学の教えを担うなど

しないのだ。

しかし、和尚は、先見の明も

兼ね備えた知恵者でもあり

時がすでに都会や街が近代化していて

価値観もどんどん変化している世の中で

一信たちが大人となった時に、

困らない様に、この村からも

学識高い者を育てなければと

和尚もまた薄くではあるが

探していたのも理由にあるのだ。

そこへ、ある時一信の両親が

相談してきて、その様を聞くなり

承諾したわけだ。


他の村の子供達は、もう少し歳を取れば

親の仕事の手伝いをするというのが

だいたいだった。

他の子達も頭が悪いわけではない。

ただそれぞれの事情を受け入れている

だけのことであったから、

特別一信を羨ましいなどとは、

想っていないむしろ賢い仲間たちなのだ。

だからこそ胸ぐら掴んででも

寺へ行かせた、あの少年は、逆に喜んでいたとあとでその両親に聞かされる。


一信が不安が湧いたのは、

まだ幼いだけで、

この村にそんなに

懐の狭い所なんて無いのだ。


「さぁ一信、今日はなすまんがな、もう帰りなさい」

え?

「おまえの決心を確認できたらそれで十分。ワシは、隣村に法事にいかねばならん。」

あ、はい。では次の予定を・・・

「うむ、今日は、もうよい。

ワシが寺を出る時は、門を閉めねばならんワシしかおらんからな、本当は、ご本尊に手を合わせたい人のために開けておきたいのだが、いたしかたない。そこで、悪いが明日から門番をしておくれ、竹ぼうきをやるから、ワシの留守の間は、境内の掃除にはげむのじゃ。それとそんなこぎれいにな服すぐにボロボロになるからいつもの格好をしておいで」

あ!あの。勉、

「勉学は!13時から16時!これは、約束する。それ以外は、掃除!13時から16時の間は、お前優先じゃ。お友達にもそう伝えなさい。」 

「はい!では、失礼します!」

「うむ」


そして帰り道、友達の家を周り報告をし

家路に着いた。

「あら?随分と早いじゃない。」

「決心の確認は承知したから、ワシは

隣村で法事があるから、帰りなさいって」

「忙しいわなぇ申し訳ないわぁ、今度お供物もっていきましょうかね」

そして勉学の時間他の時間の過ごし方など

一通りの日程を伝え、やがて父親も帰ってきてその旨を伝えた。


両親は、安堵して

やれやれ。頑張れよ一信と

心で励まし、


一信も期待に胸を膨らませていた

のであった。


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月天の閃き キラ・セダイ @garururu508

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