落ちこぼれ、ダンジョンに潜る
「良かったな。賭けに勝っておいて」
「ふぁ、ファンタジー? 」
「スマホがそんなに珍しいか? 異変前もあっただろう」
「違う、そうじゃない」
ダンジョンに潜る前にスマホを買ってアリアに渡す。ついでに予備の装備一式も渡す。銃の使い方はわからないだろうけど、魔法銃なら有り余る魔力で補えるどころか兵器になるだろう。う〜ん、ギフト格差。ずるい。
「ほいアリアのぶんのリュックだ。食料や水は貴重だからなくすなよ。いや言うほど貴重じゃないいや時と場合によっては貴重。とりあえず水は絶対に貴重。あとスマホはぜっっっっっったいに失くさないでくれよ」
「リュックごとなくしそう」
「俺は五回ほど無くしてる」
「なんか生き残れそう」
「108回ほど死にかけてる」
「やっぱり行きたくない!」
「ここはフロリダ第7ダンジョン。比較的に簡単だから大丈夫だ。電話が通じない下層までは行かない。危険生物も一種類しかいないって」
「遭遇しない?」
「トールメリー」
「依頼モンスターじゃん!」
「働かざる者食うべからず」
「うっ………に、ニート……いやニートは……」
入口にまで来てグズグズするアリア。異変前の人って皆こんな感じなのか? すっごく嫌な顔をするが流石に背に腹は代えられないのかちょっとずつ門に向かう。初めてだしチュートリアルダンジョンに行きたいが人目がある。sの正体がわからない限り離れた所しか連れていけない。
ダンジョンの門を開く。下に続く階段を降り続ける。普通の家の階段の十階分以上もあり、かなり下に行く。
だが階段を降りきった先は降りた高さとは比べ物にならないぐらい上に、横に広がった草原があった。
「………嘘……空がある。それに太陽も」
アリアは驚く。無理もない。始めてくる人は皆思う。100mしか降りてなくても天井まで平気で数キロあったりする。太陽そっくりな物がある場所も。城の中のようなのもあればいしだたみしか存在しない場所もある。
「不思議……夜とかあるのかな」
「自転車をレンタルしたからさっさと下層に行くぞ」
「…………」
レンタル自転車置き場。そこから一本道に敷かれているアスファルト。道路に沿って咲く変な花。
「整備されてる!」
「そりゃされてるだろ。攻略済み階層だぞ? 向かうのは四下層。それより下は電波が届かないから絶対に足を踏み入れるなよ。あと花は間近で嗅ぐなよ。獣人だと鼻がもげる」
自転車に乗ってサイクリングする。このフロリダ第7ダンジョンは全14下層まで続いており12まで攻略済み。整備は8下層まで続いている。整備と言っても下層に行くための階段までの最短ルートまで。または採掘場、その他。
2下層、草原と打って変わって石垣の街。の、まん中を通るアスファルト。すれ違う資材を乗せたトラック。用が済んだ冒険者達。
「なんでダンジョンの中にエレベーターあるの!?」
「エレベーターじゃないリフトだ。そりゃ無いとトラックや戦車が入れないだろ」
「現代文明! それができて攻略できてないって、どんな化け物がいるのよ……一度もモンスターに会うこと無かったし。もしかしてこの花?」
「正解」
苦せず4階層にまで辿り着いた。自転車を停めて道路から道を外れる。そこは洞窟。開放感ある1下層と違い。狭く感じる。けれど洞窟内の壁や天井に青い光が走って明るい。
「この光が走っている方向へ向かうぞ。そこでトールメリーを探す。ちなみに光が来る方向へ向かうとボス個体のトールメリーがいるぞ」
「普通個体でお願いします」
「俺だって相手したくない」
洞窟を進んでいく。代わり映えしない景色だがアリアは光が走っているだけでも楽しんでいるようだ。
「ゴブリン」
「ひぃ!」
一瞬にして俺の後ろに隠れた。
ちらっと見えたから声に出したけどそこまで俊敏になるのか。よく見たらあれは群れだな。少し広い空間に巣を作っているみたいだ
「流石に怯え過ぎない?」
「だってゴブリンってアレでしょ! 沢山いて小回りが効いて撲殺してきたりエロ同人みたいにひどい事してくるやつ! エロ同人みたいに!!」
「ゴブリンはゴブリン同士でしか……その、チョメチョメしないよ性癖異常者いがい! それに基本は銃声聞けば巣に逃げてくから。ほら試しに渡した魔法銃で撃ってみろ」
アリアは恐る恐る顔を出して横に立つ。不安そうにしながら腰のホルダーにある魔法銃を手に構える。
ゴブリンはこちらに気づいて警戒しながら複数で近づいてくる。
「ガァァァァぇァァァァ!」
巣に近づかれて気が立っているのか威嚇してくる。棍棒を握りしめてジリジリと近づいてくる。だがアリアが持っているのは銃の為近づかずにその場で撃つ。
「へ」
「え」
アリアが引き金を引いた瞬間、その銃口からは想像できない程の極太レーザーが発射される。その太さは小さいゴブリン全体を包み込み一瞬にして蒸発させた。後ろの巣もろとも消し炭にし大爆発を起こす。しかし、反動も凄まじくアリアがその場で倒れてしまい銃口も上へ向く。レーザーによって爆発の起こした天井は一気に崩落していく。
「うおおお! 逃げろ!」
魔法銃ワイヤーモードを後ろに撃ち込みアリアを掴んで巻取り、直ぐに回避する。唖然とするアリア、渡した魔法銃の銃口が完全に消し飛んで内部が溶け落ちている。もう使い物にはならない。魔力が多いと聞いたから予め威力を抑える設定にして渡したのにこの始末。
威力の設定と実際の出力から考えてもアリアは国一番を争う魔力を持っているのは確かだ。
「大丈夫かアリア」
「う、うん」
アリアは自分の手を見ている。手が軽く痺れている様子だ。さて、どうしたものが、洞窟の一部が崩落して進めなくなったのは問題ない。問題はアリアの武器だ。魔法銃は一番弱い威力に設定するとどんな魔力量でも一定になるがちょっとでも上げれば出力は自身の魔力量に依存する。おそらくアリアには今後拳銃型じゃなくショットガン、ライフル型を持たすかたちになる。ただ今はそれらはここにない。とりあえず時針の魔法銃の威力を下から二番目の威力設定にして渡す。それでも過剰出力になって撃ちまくれば壊れるとおもう。
「ごめん、壊しちゃった。これ貰っちゃったらカズヒラの銃は?」
「俺にはデザートイーグルがある。問題は今のでボス個体がこっちに来る可能性がある。直ぐに移動しよう」
アリアに手を貸して立ち上がらせたら直ぐに離れる。
「手、まだ痺れるのか?」
「………うん」
流石に射撃練習をさせてから挑むべきだったか。けどそれだと家賃払えないし……。
「一回戻って立て直そう」
「わかった」
武器も壊れたし、用が済んだ冒険者から何か武器を買い取れないかな。
「所でなんか眩しくない?」
言われてみれば壁を伝う光が明るい。確かに崩落のせいでボス個体が近くに来るかもしれないがそれでもかなりの距離があったはず。こんなすぐには……
バチン!
そう大きな音がする。よく見たら伝う光が稲妻状になって前から流れてくる。
「おいおいまさかうそだろ!!」
前を見る。少し離れた所に広い空間があったがそこには光る魔法陣の上に立つトールメリー。それもボス個体だった。
落ちこぼれの俺、実はフォロワー数人1000万超えの世界唯一のダンジョン歌手 Edy @sakananokarumerayaki
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