合コンにコスプレデビュー?!サポーターズ〜ナースな看護師〜

火猫

第1話

「しゃーせっ!可愛いッスね!」

「いらっしゃいませだろーがぁ!すんませんっ!今日入ったばかりの新人バイトで」

「…なんだ、この居酒屋は」



俺は今、場違いな場所に居る。



「いやー、良かったよ!人数合わないって言われてたからさー。危うく合コン中止になるとこだったよ。君が来てくれて助かった!ありがとう!」

「…気にしないで下さい」


隣にいるイケメンが話しかけて来る。

キラキラとしたその雰囲気。

陰キャの自分には眩しすぎるぞ。



俺は合コンの場に居るのだが…いわゆる数合わせの為に無理矢理連れてこられたのだ。


『1人欠員でちゃってさー。人数合わないと行かないって奴が相手側にいてさ…頼むよーハルちゃん🙏今回だけ、マジ最初のちょっとだけ!先っぽだけでいいからさー!…言う事聞かないとレポートの手伝い辞めるぞ』

『先っぽって何だよ…いやいや、それよりも最後は脅しじゃねーか。だけども単位落として留年したらどやされるしなぁ。はぁ…仕方ない。でもタイミングで抜けるからな』


『さすがハルちゃん!心の友よ!!恩にきる!!!』


絶対に恩返しはしないコイツは現認されない言い回しをする…ムカつく。


ソイツは茶髪でブラウンの瞳、出るとこは出て引っ込むとこはキュッとしている…スタイル抜群のある意味で完璧な美少女。


今目の前でウインクしている、幼馴染の美月だ。


クソっ!ニヤニヤしやがって。

見た目だけは昔から良いからしょっ中告白されたり、その度に付き合ってみてはすぐ別れたりと…まあある意味学校公認のビッチである。


いつからか抱いていた恋心も冷めるほどだ。


まあそんな事よりも…抜け出すタイミングである。


人数は5人と5人で10人。

場所は駅前の居酒屋。

テーブルは出入り口近くでその扉に俺は1番近い、しかも端っこと好条件。


あとは脱出するタイミングだ…まだ乾杯すらしてないが。


「えー、みなさん。コップはお持ちいただきましたか?ではこの出会いに乾杯しましょう。プロージット!」


なんでいきなりドイツ語やねん。


みんな一泊置いてからバラバラと杯をあちこちに当て始めた。


スタートから暗雲立ち込めてない?

だがその雰囲気を劇的に変える奴がいた。


「高上くん、この場を設けてくれて助かったよー。同じ学部内じゃ出会いが少なくてさ、やっぱ刺激って大事じゃん?だからさ!今日は交流を深めよーぜ!」

美月がコップを振り上げて声を張る。


Eカップのバスト(体型測定アプリの使い方を聞かれて意図せずサイズを知ったのだ)が揺れて男達の視線は釘付けだ。


プロージットと声を上げた奴も改めて乾杯と言い直して合コンが始まった。


俺は声を掛けられても曖昧な返事と対応で距離感を作る。

美月の視線を感じたときだけ相手にぎこちない笑顔で返した。


“ガチャン”

そんな中、斜め前に座る男子が持っていたグラスを落とした。

口をつけただけだったようでテーブルから溢れ出した飲み物が広がる。


「あっ、ご、ごめんなさい」

すくっと立ち上がり隣の女の子を気遣うそぶりをする、が彼はストンと力なく座ってしまう。


「大丈夫?…顔が真っ青じゃない?!」

俺は咄嗟に彼の体を支えた…思ったより小柄な身体はぐったりして力が入らないようだった。


「だ、大丈夫です…ちょっと気分が悪くなって。たぶんトイレに行けば治ります」

「トイレに行けばって…」


俺が心配そうにしていると。

「お腹痛いのか?さっき行きがけに食べたアイスのせいかな…トイレ行って出してこいよ」


どっ、と笑いが起きた。

先ほど俺に声を掛けてきたイケメン、高上が急にそんな事を言った。


普通この場でそんな事言うか?

イラついた俺は高上を睨み声を上げようとした。


「大変!トイレならさっき酔ったオジさんが入って行ったから長くなるかも。ハルちゃん、隣のコンビニのトイレに連れてってあげなよ」


俺の態度の変化にいち早く気づいた美月は俺に近づきながら。

「ほら、行きなよ。コンビニに薬も売ってるから登録販売員に丸投げしちゃないよ。今日はありがとね、バイバイ」

小声で俺を送り出した。


追い出されるように外に出された俺と小脇にもたれ掛かる小柄な男子…高上の不安な感じの視線が気になったが、とりあえずコイツが心配だ。


「大丈夫?私に出来る事があったら言ってね。とりあえずベンチに座って」

俺はそう言ってコンビニ前のベンチに座った。

その際によろけた彼の手が俺の胸に当たった。


「あっ、ご、ごめん!って、え?胸が片方だけ潰れた…」

マジマジと俺の胸を見る彼。


あっちゃー、詰め物してこなかったんだっけ。さっさと帰るつもりだったからな。


仕方ない、カミングアウトするか。

男同士ならなんの問題もないだろ。


「やー、ごめんね。俺ってば男なんだわ。今日は幼馴染に押し切られちゃってさ。女装して来たんだ。…気持ち悪いよな?」


ウチの学校は看護学校。

俺はそこの数少ない男性看護師を目指している。

美月も当然看護師を目指しているが、明らかに目的が男漁りの感じだ。


俺は普通に憧れをもって入学したのだが、その憧れである実の姉の影響でコスプレを趣味としていた。


今回は合コン相手が看護学校なら女性だけと思っていたらしく、どうしてもメンツが揃わないと美月が俺の姉に相談したら俺に白羽の矢が当たったと言うわけ。


腰の位置が分からないようにワンピースを着て、首元はスカーフをまき、ウィッグに大きめのリボンを装着。

ムダ毛がかなり少ない(脇毛も元々生えない)体質なので軽いメイクでOK。


実はネット以外での御披露目は初めてだ。

もちろん念入りにメイクはした。


だから見た目はバッチリだと思うのだが…さすがに触られるとバレちゃうよね。


彼はビックリした様子で口元に手をやり、息を吸った。えーッッッッ?と言うのかな。


“ブチ”

ん?

“ブツッ”

え?

“バシーッッッン!”

「きゃっ?!」

胸が弾けた?え?何これ?

「いやぁぁぁあ!み、見ないで!」

咄嗟に彼は両腕で胸を押さえた…いやゴメン、シャツのボタンも飛んだから谷間が見えちゃった。


「え?君、女の子?」

胸を押さえて屈みながらも俺を見上げた…ちょっと涙目で頬を赤らめて、可愛い。


「…はい、あおいと申します」

グスッと鼻を鳴らして名乗る彼女。

「あ、はい。俺ははるかと申します…」





えーと…どうしよう。






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