45.エピローグ:メイド男爵、展望を語る




「王兄陛下いませんでしたねぇ……」


「まぁ、どうせまたどこかをほっつき歩いているんでしょうよ」


 女王陛下に爵位を認められ、いよいよ王兄様のところに挨拶に向かった私達なのである。

 感謝の一言でもお伝えしようかと思っていたが、あいにく留守だった。


「メイメイはあの屋敷の人たち嫌いです!」


 歩きながらプリプリと怒るのはメイメイである。

 王兄様の屋敷の門番の人に「メイド風情が男爵を名乗るな」などと言われて、ぞんざいに扱われたのだ。

 人を見た目で判断するなと言いたいけれど、まぁ、今日は許してあげようじゃないか。

 次に、事実を知った時にはもう遅い状態かもしれないけど。


「それにしても、男爵、かっこよかったですよ! 女王様からメイド男爵の称号まで頂くなんてびっくりです!」


「お師匠様、素敵でしたっ!」


 マツとメイメイは私が男爵の地位を保証してもらったことを心底喜んでいる感じ。

 ふふん、確かにこれで「男爵を名乗る痛いメイド」からは無事に卒業である。

 

「よぉし、せっかく王都に来たんだし、人材を集めるよ!」


 私はこれからの展望を二人に話す。

 まずするべきことは何はなくとも人材探しだ。

 今の私たちの砦は私とマツとメイメイしかいない。

 商人だとか色んな人材が必要になるはず。


 ドラゴンの爪と牙を売ったから少しは宣伝ができるはずだし。


「なるほど、サラ男爵の野望が花開くってわけですね! もちろん、賛成ですよっ! 世界一の砦にしましょう! 足が生えて、空飛ぶ奴を作りましょう! はぁはぁ、ぷすー」


 マツは何をどう勘違いしたのか、彼女の変態的な夢を語り始める。

 呼吸音が何気にかわいいが、おっさんだったら逃げてると思う。


「メイメイはメイドとして不殺拳を極めますよっ! お師匠様、これからもご指導、お願いします!」


 異国風のメイド服に身を包んだメイメイはとても嬉しそうである。

 よくよく考えたら、彼女の素性を私たちはよく知らない。

 なぜ世界最強を目指しているのか、どこから来て、どこへ行くのか。

 そもそも、あの時どうして火を噴いたのか。


「よぉし、それじゃ、今日はお祝いだよっ! ぬはは、王都のスイーツ食べまくろーっ!」


 とはいえ、まずはお祝いだ。


 お父さん、お母さん、私、ついにやったよ。

 家をもう一度、成り上がらせてみせるよ。


 そして、仲間(みんな)と幸せに生きてみせるからねっ!


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メイドです。置き去りにされた砦は超古代兵器だったみたいです。 海野アロイ @psalm

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