第4話 従者の恋人
▶ 登場人物
①メイド(20代若い女性。商人娘が可愛くてしかたない。)
②商人娘(20代メイドよりちょっと若い。お店を経営している。メイドさんが大好き。)
③坊っちゃま(20代暴君。メイドさんの事がずっと好きだった。)
④商人弟(20代、商人娘の弟。主に配達を頑張っている。)
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(お店の裏口)
商人娘:お忙しいのに、わざわざ来てくださってありがとうございました。
メイド:わざわざ、なんて。私が貴女に会いたくて来ているのよ。貴女とこうして会える時間は、癒しの時間なの。
商人娘:○○(メイドの名前)さん…。私にとっても貴女との時間はとても大切です。出来ればもっと長く、一緒に…。
メイド:可愛いことを。離れ難くなってしまうじゃないの。(頬にチュッ)明日はお屋敷に来てくれる日だったわね。待ってるわ。
商人娘:はい。また明日!
メイド:明日ね。
(メイド去る、少し置いて)
坊っちゃま:見たぞ!
商人娘:え
坊っちゃま:見たぞ見たぞ見たぞ!とうとう現場を押さえた!
商人娘:え、え?…貴方は。
坊っちゃま:うちのメイドが世話になっているようだな。アイツの相手がお前だという検討はおおよそついていたが、今やっと確信を得た。
商人娘:な、なんの事でしょう?○○さんとは友人で。
坊っちゃま:ゆうじん~?そんな風には見えなかったなぁ。知ってると思うがアイツの恋愛対象は女だ。
商人娘:憶測でものを言うのはやめてください。お話なら中で。
坊っちゃま:ふん。人に聞かれてはまずいと言う事だな。
(扉がしまる。一応客人に茶を出す。)
商人娘:どうぞ。
坊っちゃま:毒入りか?
商人娘:…そんなわけないじゃないですか。
坊っちゃま:いつからだ。お前はいつからアイツと。
商人娘:何を仰っているのかわかりません。友人としての関係は去年からです。お屋敷に出入りさせていただく内に、仲良くしていただいて。
坊っちゃま:深い仲になっていったか。
商人娘:友人として、です。
坊っちゃま:二人共、友人に向けるような目ではなかったぞ。(立ち上がり娘に近付く)
商人娘:お、おやめください!
坊っちゃま:(至近距離)アイツとは繋がったか?
商人娘:…はぁ!?
坊っちゃま:出来ないよなァ、女同士じゃ。
商人娘:やめてください!
坊っちゃま:年頃の娘が女の悦びを知らないまま老いていくなんて、俺には耐えられない…。
商人娘:や、やめて!…誰か!んっ(口を塞がれる)
坊っちゃま:アイツがいけないんだ。アイツが僕を拒んだから…。僕はずうっと昔からアイツの事が大好きだったのに…こんな、こんな女に…
商人娘:んーーーっ!
坊っちゃま:恨むならアイツを恨め。そして僕に溺れろ。お前が僕に溺れればアイツは僕を拒んだ事を何より後悔するだろう。
(翌日、屋敷裏口)
メイド:え。
商人弟:姉が体調を崩しまして、代わりに俺が。いつもお世話になっております。
メイド:大丈夫なの?お医者様には?
商人弟:朝から起き上がれないようで今も伏せっているんですが、医者はいらないと言って。こんな事初めてなんですよね。俺も妹もどうしていいか参ってしまって。
メイド:…心配だわ。
(数日後、商人宅)
商人娘:な、なぜ?
坊っちゃま:見舞いに来てやったぞ。妹に断られたが、言いくるめて通してもらった。…暫く見ない間に随分やつれたな、大丈夫か?
商人娘:(伸ばされた手を払う)触らないで!
坊っちゃま:アイツも心配していたぞ。ここには来たか?
商人娘:何度か…。
坊っちゃま:あの事は言ったか?
商人娘:言えるわけがないでしょう?
坊っちゃま:ふふ、だよなぁ。
商人娘:あなたの顔など、二度と見たくない…っう、ぉえ
坊っちゃま:おいおい、どうした?大丈夫か?
商人娘:はぁ、はぁ。構わないで!…はぁ、はぁ。
坊っちゃま:お前の状態、見た事がある…。妹を身ごもった母様が、お前と同じように苦しんでいた。まさか
商人娘:ち、違います!違う!!…っう
坊っちゃま:はは…(娘を抱く)
商人娘:やめ、やめてくださいっ!
坊っちゃま:ははは。そうか、そうか…!
(更に数日後)
メイド:まさかこんなことになっていたなんて…。あぁあ、あなたにどう償えばいいか…。
商人娘:貴女は何も悪くないんです!私がもっと、もっと…う(泣)。
メイド:ぁあ、だめよ。お腹の子に障るわ。大丈夫、大丈夫よ。奥様も旦那様も、あなたとお腹の子の事を大切にしてくださると約束してくれた。
商人娘:わたしっ…私は…(泣)
メイド:こんな事になってしまってごめんなさい。お店の事は大丈夫、あなたの代わりに私が。だからあなたは安心して産んでちょうだい。
商人娘:○○さんっ…。
メイド:あなたならきっと良い母親になれる。こんな風になってしまったけど、私は今でも貴女の事が大好きよ。これからも、ずっと…大好き。
✼✼✼ おわり ✼✼✼
【フリー台本:百合】従者の暇 菜梨タレ蔵 @agebu0417
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