アレルギーオタクの日常とあれそれ

@necoco_cocoa

第1話 アレルギー作品とは

 29歳独身、性別女、バツイチ子無し。

 保育学科を専攻し卒業、経理事務を三年半勤めて退職。数年後、工場を転々として今に至るが、先日眩暈を起こして割と大事になり、来週の火曜日に出る病院の検査の結果次第では退職の危機に追いやられています。


「まだ勤めて四か月だよ……たはは」


 酒たばこはしない、というか、身体が受け付けないので無理。

 珈琲は取り過ぎると具合悪くなるのでパックのカフェオレが限度。

 運動は嫌いだが、それなりに気を付けていてもどこかに不具合は発生するものらしい。


「まあ仕方ないって。クビになったら次探すっきゃないって」

「折角夜勤無しの給料高いところ探しまくって選んだのにこれだもの、凹むって」

「まだクビとは限らないって」

「多分もう無理。てか眩暈とか学生の時からあるし座ってても起こるのに、逆になんの仕事ならできるってのよ」

「在宅?」

「あったらとっくに選んでるっての……。あ!」

「どした?」

「……アレルギー作品だった」

「あー。どんまい」

「くっそー……この人の話めっちゃ好みだったのに……12話目にして」

「こればっかりはねえ」


 アレルギー作品。勝手に私が作った造語である。

 似た意味の言葉に『地雷』というものがあるが、私は個人的にこの言葉が好きではない。人の作品を勝手に踏むな。


「今日はどんなアレルゲン?」

「メインキャラはノマカプなのにしれっとそれ以外のものがおまけに出てきた……」

「ああ、防ぎようのないやつね」

「多分今後もこの二人出てくる……。これまで楽しませて頂きました……お気に入りから解除させて頂きます」


 食物アレルギーを想像して欲しい。

 例えば蕎麦アレルギーの人は蕎麦屋には行かないし、そのアレルギーを知っている周囲の人も食べさせようとはしないだろう。


 しかし、稀に本人でも気付かずにアレルゲンのあるものを食べてしまって口の中がただれてしまう防ぎようのない事故というものも発生してしまうことだってある。


 旅行中少し調子が悪い中、ちょっとこじゃれたレストランでとんかつを頼んだら、付け合わせのキャベツ、の上にかかっていたさくらんぼのソースのさくらんぼでアレルギー反応を起こすなんてこと誰が想定できるだろうか。ちなみに私の実体験である。

 アレルゲン品目をちゃんと記述していたレストラン側に非はないし、そもそも自覚が無かったのだから致し方ない。今後自分から食べないよう気を付ければ良いだけの話なのだが、警戒はしてしまうだろう。

 食べ物であればキャベツだけ食べずにいるか、レストランに事情を話してソースをつけないでもらうこともできるだろうが、あいにく、漫画はレストランとは違うのである。食べられなければ注文しない、または注文してから気付いたら作ってくれた人と食べ物に謝罪して食べないという選択肢を取ればいいのだ。

 たまにいるが、一読者が作者様に勝手に自分の都合押し付けて自分好みの作品に作り替えさせようとしてるんじゃねえ何様だお前は。


「年を取るごとにアレルゲン増えていくのなんなんだろうねえ……」

「学生の時はある程度食べられたのにねえ」

「いや、当時は当時で好き嫌いはあった。でもこれ好き嫌いの問題じゃないんだ。死活問題なんだ」

「普通の人が食べたらおいしい料理なのに食べる人によっては毒レベルなやつね」

「毒とか言うなよ失礼だぞ。作者はおいしい料理を提供してるだけなのは分かってるのよ、問題なのは食べられない私……。だから大っぴらにこれ食べれませんとかいうのも失礼なのは知ってるからSNSには書いたりしないけどアンタに愚痴るのは許して欲しい」

「まあ他人事だから適当に聞き流してやんよ」

「そのくらいがありがたいわ……」


 このお話は、作品に纏わる様々なアレルギーを持つ女が愚痴ったりだべったり、たまに日常の話をするだけのお話。

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