エピローグ「劇団『ダイバース』」

 エイトが自室で月を眺めていると、トントンと扉を叩く音がした。


「どうぞ」


 部屋に入ってきたのはレイラだった。


「ごめんなさい」


 レイラは部屋に入ると頭を下げた。エイトがもう帰れなくなってしまったからだ。アークの話によると、7日後の同時刻を逃した以降の帰り方の記述は見つからないという。


「レイラさん。あなたはどうして、この劇団をやってるんですか」


 エイトの質問にレイラは顔をあげた。少し間をあけて、


「この世の中から、種族差別をなくすため」


 レイラは答えた。

 レイラの言葉に、エイトは振り返った。その顔には微笑みが浮かんでいた。


「残ってよかったです」


「え……」


「俺の夢も、演技で世界を変えることなんです。この世界を変えるまでは、きっと俺は帰れませんし、帰りたくない」


 エイトはレイラに手を差し出した。


「俺を、この劇団に入れてください」


 レイラはしばらく驚いて呆然としていたが、やがて表情を引き締めてエイトの手を握った。


「ようこそ。歓迎するわ」


「そういえば、この劇団の名前って……」


「ああ、そういえば教えてなかったわね」


 レイラは笑った。


「多様性が集まる劇団、『ダイバース』へようこそ」


                         (完)

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異世界アクター! 空木 種 @sorakitAne2020124

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