第6話 いつか二人が幸せになる世界をつくる

「桃さん……どうして……?」

動揺するアクージョこと九条綾香に対して、桃はまっすぐな目で相手を見つめている

「綾香さんのこと、ずっと見てたから、わかったよ。お願い、ゴクアーク団をやめて」

「そんな……」

 これは、イケるか……!? 俺たちが思った、その時。アクージョの座り込んだ地面が、突然黒い渦をまいた。

 驚く俺たちをよそに、アクージョは黒い渦を見て落ち着きを取り戻したようで、渦に飲み込まれながら桃に言った。

「駄目よ。この世界から醜いものを排除するまで、私はゴクアーク団をやめないわ」

「そんな、綾香さん!」

「そして、あなたと私が幸せに暮らせる美しい世界をつくるの。……それが、私の心からの願いなのだから」

「やだ、あたしを思ってくれるなら、もうゴクアーク団をやめて、綾香さん!!」

 桃が手を伸ばすが、アクージョは首を横に振り、黒い渦の中に飲み込まれて消えてしまった。


※  ※  ※


次の日、九条さんは学校を休んだ。

桃も、登校したときは気丈に振る舞っているように見えたが、途中で気分が悪くなって早退することになった。俺は桃に付き添い一緒に帰ることにした。

 学校から帰ると、家の前に見知らぬ車が止まっていて、門の前にひとりの男が立っていた。スーツをかっちりと着こなした、かなりの美形だ。

「赤木桃さんのお宅はこちらですか?」

「俺は桃の兄ですが、妹になにか?」

 桃を後ろにかばって訊いてみる。

「私は九条綾香さんの婚約者です」

「えっ」

 綾香さん、桃と付き合っていたはずなのに婚約者がいたのか?

「綾香さんからの伝言です。私はもうあなたとは以前のように会うことはできない。しかし必ず夢は叶えてみせる。どうか遠くから見守っていてほしいと。桃さん、あなたは綾香さんと随分親しかったようだが、彼女はこのまま転校する。君とはもうこれっきりだ」

「な、そんな勝手に!!」

 俺は抗議の声を上げたが、男は丸きり無視して、高級車に乗り込むとそのまま走り去ってしまった。なんて勝手な奴なんだ。あの男も、九条さんも。

「お兄ちゃん……」

「桃、大丈夫か」

「……あたし、決めたよ。綾香さんが考え直してくれるまで、アクージョと戦う」

 桃の言葉に正直おどろいた。ライトレンジャーを辞めたい、と言われても不思議ではないと思っていたからだ。

「あたし、今まで綾香さんの良いところしか見てなかったの。アクージョの綾香さんのことも、ちゃんと見て、受け止めて、悪いことを止めたい。いつか、本当に綾香さんと幸せになる世界を守るために……いいかな? こんな理由でゴクアーク団と戦っても」

「……いいよ。全然いい。青山も黄島も、俺と同じ事を言うよ」

 俺がうなずきながら言うと、桃は笑った。

 でもその笑顔は、子供の時から見慣れた天真爛漫なものとは違っていて。恋の痛みを知ったほろ苦い顔をしていた。

 ああ、俺の知らない間に、桃は大人になっていたんだなと思った。



おわり


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うちのピンクと敵の女幹部が互いの正体知らずに付き合ってるんだがレッドの俺は一体どうしたらいいんだ 藤ともみ @fuji_T0m0m1

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