第5話 わたしはこの世界を守りたい
俺たちが変身して美術館にたどり着くと、すでにピンクとアクージョが一騎打ちをしている最中だった。ピンクはうちでは回復役だけどライトブレードを使った接近戦も強い。アクージョもどちらかといえば後方で指揮を取るタイプだけど自身の剣術もかなり強い。実力はピンクと五分五分のようだ。
「遅かったか……!」
「まだ大丈夫ッス! ピンク! アクージョに攻撃しないで! 話をし……もがッ!?」
突然バッテンマークのでっかい絆創膏が飛んできて、イエローの口に貼り付いた。絆創膏が飛んできた方を見れば、絵画が擬人化したような怪人がシュッとした立ちポーズをとっている。
「美術館ではお口チャーック、ですワ!!」
「もがががもがーー!!」
「イエロー! ふがっ……」
「ブルーまで、って、ングググ!!」
よりによって、こんな時に口封じ攻撃してくるなんて! 声が出せなくても、俺たちは目で合図を送りながら連携をとり、敵の戦闘員たちを蹴散らしていく。そう、いつもの雑兵相手なら声が出ないことくらいなんてことない。でもこれじゃ、桃と九条さんが互いの正体を知らずに闘うことを止められない!
「アクージョ……あなたは、どうしてこんなひどいことをするの!」
ライトブレードとゴクアークソードの剣戟を交わしながら、ライトピンクが問う。
「私はこの世界の醜い物をすべて排除し、美しいものだけ、美しい人達だけに満ちた世界を創るのよ。ライトレンジャー、私の邪魔をする貴様ら蛆虫どもを、今日こそ叩き潰してやる!」
ゴクアークソードの鋭い突き。今ならわかる、あれは九条さんがフェンシング部で見せる技そのものだ。頬をすれすれのところで躱したピンクがライトブレードを振るいながら言う。
「確かに、あなたが真っ先に怪人に襲わせたのは、『自然破壊者め!』って叫んで絵にトマトジュースぶちまけた迷惑なお客さんだったけど……だからって襲って良いわけないし、関係のないお客さんまで巻き込むのは許せないわ!」
「うるさい!有象無象の猿どもだって、美しくないのだから一緒に滅んでしまえばいいのよ」
「……わたしは、そうは思わない。確かにこの世界にいるのは、美しい人やいい人たちばかりじゃないかもしれないけど……わたしは、わたしの大好きな人達がいる、この世界を守りたいの!」
ライトブレードが、ゴクアークソードを跳ねあげた。反動で、アクージョも煽られて、倒れる。ピンクは肩で息をしながら、ライトブレードの剣先をアクージョに向けた。……まずい!!
「もがが、もがー!」
「ンググー!!」
ピンクを止めようとする俺たちの言葉は届かない。ライトブレードの切っ先をアクージョの喉元に向けたまま、ピンクは存外静かな声で語りかけた。
「……あなたは言ってくれたよね。世界中の人々が私みたいな人たちばかりだったら良いのにって」
「は? あなた何を言って……」
「それくらい私を好きでいてくれるなら。私が好きな世界のことも愛してほしいの。お願い……綾香さん」
「えっ」
ピンクが頭に被ったマスクをはずす。
アクージョも俺たちも驚いてピンク……桃を見つめた。
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