まだ輝いている

にのまえ あきら

まだ輝いている



「死にたい」と 泣くキミの首に 手をかける 見返す瞳は まだ輝いている


リスカあと なぞりながら あなたは言う 「イカ焼きじゃん」 二人で笑った


あの漫画 アニメ化するの? 来期から! なら生きなきゃね 春遠はるとおからじ


吐き気ごと おくすり飲んで家を出る 今日はあなたとのデートだもん


死にたいと つぶやくキミに 差し出した タバコで十分じっぷん 小さな自殺


紫煙しえんくゆらし 天に向け 吐きかける けむたい想いよ 月まで届け


卒業アルバム ゴミ箱に入れ ほっとする 捨てられるようになってよかった


包丁の 照り返す光に 笑うキミ 「危ないんだね」「やっとわかったか」


明日と過去より恐ろしいもの キミの寝相 あと家の戸締り


「依存だよ!」 叫ぶ親友 振り向いて 私は笑う 「だから生きられたの」


あなたとさ 出会っていない もしもの世 きっと私は いないだろうな


その昔 救ってくれた 僕のこと 君は覚えて いないだろうな


「まだ死にたい?」 問われる声に 首を振る 「むしろ死んでも 化けて出るから」


取り出した カッター見ても 怖くない あなたと一緒に ゴミ箱開けた


「デート場所? どこでもいいよ」 困ったな 決めきれないほど 候補があるのに


服えらび なんでも似合うと 笑うけど それが一番 困るんだってば


遠出して 迷った末に 笑いあう 僕らを見下ろす 女王様よ


真夜中に まんげつ見上げて うそぶくの 「私はもう 死んでもいいわ」


真夜中に 綺麗だねと 君を見る その瞳は もう輝いている


帰り道 思わぬ場所から たどり着く 巡り巡って まるで人生


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

まだ輝いている にのまえ あきら @allforone012

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ