俺の頑是無い歌『溶ける記憶の幼年期』

@vanillableep

Monochrome sand storm scan line converter disconnects

年若き育ての親に気兼ねして生みの母御の面影散らす


天空の電波捕らえる受像機の天然色を知らぬ亡き母


母臥せて腕に埋め込む人工の血管に触(さわ)れば痛いと言われて


病床の母の最期に勉強をせよとの言葉貰いながらも


母の死を 仮面ライダーと蜘蛛男 見続けていた 知らされないまま


妹の僅か十日の生を問う 世界の甘苦を知らぬは不幸か?


誕生の妹抱いて亡くなった妹の生まれ変わりと信じて


保育器の十日の経験ひとつだけ愛別離苦の妹ほのかに


妹の乳の匂いに亡き母を連想すると怒られる 駄目


亡き父の火葬の鉄扉を閉ざすとき嫌だ!と叫ぶ妹痛まし


父と母 妹たちも死に絶えて我ひとりっきりの遺族となりて


九歳(ここのつ)の子は継母に気に入られようとしたけどすっかり裏目に


母の日のカーネーションは赤と白 峻別されし生者と死者と


声響く少女の無垢なる心神で同一性のあわい溶かして


「お母さん」その音節の発声が魂の深き琴線を震わす


夏の日に宇宙から降る母の声 許されたのだ 我を迎えに


家族皆 境界線を越え逝ってしまった我をひとり残して


醜悪なうつつのことわり翻し輝く世界へ無垢の魂


願わくはパラレルワールド現出し不死の家族と共に暮らさん


屋根裏で象る世界のチャンネルに妖精たちの羽根が降り積む

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