国境の島

西野ゆう

特定有人国境離島地域にて詠む

平城のススキと風が荒涼と

お水取り火の粉を浴びて胸冷える

ふきのとう私も発つと誓う朝

抱擁で別れを惜しむ花の下

憂色の朧月夜にバス西へ

春霞島と私の色奪う

生命の色を見せたる苜蓿うまごやし

逃げ走る雉もついには飛びにけり

思い出す求めて来たり青岬

いさき干し君に届けよ薫る海

とびうおの上飛ぶ海鵜鳶の下

台風の去りて千切れた雲ひとつ

頂きに雲麓には唐菖蒲

岬より灯台見上げ居待月

角伐つのきりの便りが春日大社より

あの鹿は今も噛むや櫟の実

冬隣るひとり寝床で猫になり

風変わる頬は赤くも竹の秋

便り来て揃いの器山笑う

国境の島で待つ飛梅の君

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

国境の島 西野ゆう @ukizm

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ