ああ、素敵な恋がしたい

カトリーヌ

プロローグ

きらびやかな舞踏会。

天井に豪華なシャンデリアのある大広間で、人々が踊っている。


「はじめまして、僕はリゼット・エルメル。子爵ししゃくをしています」


微笑みながら、目の前にいる二十代前半くらいの長身のイケメンが声をかけてきてくれた。


「好きです。アナタは私の運命の人ですわ」


「えっ!そ、そんな、急にそんなことを言われて…上手く反応できなくてすみません」


「気にしないでください」


私の隣にいる男爵だんしゃくである父が頭を下げる。


「コイツは会う男、会う男、皆にそんなことを言ってますので。まったく、お前の運命はいくつあるんだ。もう百は超えたぞ」


「だって、皆さん素敵なんですもの」


「ハハハ。お父さん、許してあげてください。彼女は心が広いんですよ。広すぎて愛がたくさんある。だからそれを皆に分けてくださってるのですよ」


リゼットは優しい笑顔でそう言った。


「いやー、子爵様こそ広い心をお持ちのようで。感謝します。アナタのような寛大な方と結婚できたのなら、娘は至上の喜びでしょう」


父がオーバーに口を開いて笑う。

そして、口を閉じ。真剣な顔で私の耳に囁く。


「いいか、カトリーヌ。コイツはダメだ」


「な、なぜですかお父様?」


「エルメル家は領土がショボいんだ。田舎の山しかない、弱小貴族だ」


「お父様…それは当家も同じでは」


「だからだ! だからこそ、広大な領地を持つ大貴族と婚姻するのだ。じゃないと、弱小貴族の当家はお前の代で滅んでしまう。分かってるな?」


「分かっておりますとも。私の双肩に、お家の命運がかかっていることは」


「では、子爵、申しわけないですが。失礼します」


「ごきげんよう」


私と父はリゼットから離れ、別の男性のところへ挨拶しにパーティー会場に彷徨う《さまよう》

お家を守るため。

そして、最高の男性と結婚するために!



…リゼット、良かったのにな。



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