別れ道またねと君がうそぶいた切り出したのはそっちのくせに
いつからだろう。些細なやりとりにときめきを感じなくなったのは。
「ごめん」
いつからだったか。嫌なところばかりが目につくようになったのは。
「ずっと言い出せなくて、でも、就職したらどうせ遠距離になって会えないし。自然消滅はなんか、ハッキリしなくて嫌だったから、ごめん」
長い、言い訳がましい、ウザい。こんな時でも、私の頭の中は未だに彼氏への愚痴で
「別に、謝ることじゃないじゃん。結局どっちかが言わなきゃ終わらないんだし」
「そっか、ごめん」
「だから! 謝らないでって言ってるの!」
「……ごめん」
俯く彼の表情は見えない。その胸に渦巻く感情さえ、こちらに
「いいよ、別れよう。お互い、納得してるんだし。というか、多分もう、無理だし」
「付き合い続けるのが?」
「……あの頃にもどるのが、って話」
悲しみの中に、少しだけ安堵の入り混じったようなため息が
「じゃあ……駅、こっちだから」
「……わかってる」
握っていたコートの袖が、自然と指の間をすり抜けていく。
「それじゃ、またね」
去り際、彼は振り返ることなくそう呟いた。いつものように、何気ない感じで、何気ない言葉を
「……そこは、バイバイ、でしょ」
一人、寒空に笑う。冷たい。酷く冷たくて、痛くて、傷口にゆっくりと染みていく。
「……嘘つき」
握りしめた手のひらに爪が食い込めば食い込むほど虚しくて、ぶつけようのない怒りが胸の底でふつふつと踊る。
「嘘つき……!」
悔しかった。淡々と、やり過ごせるはずだったのに。人の感情を散々乱して、後片付けもしないで。ただ自分だけが、こんなにも苦しくて。
だから、お返しに私も一つ嘘を
「そういうところが、嫌いだった」
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