最終話 すっぴんは地味だけど可愛い恋人
月日は流れて三年生の三学期を迎えていた。
卒業を間近にした自由登校期間だった。
僕と圭子と聖子は揃って空港に来ていた。
「飛行機怖いんだけど!」
聖子の情けない言葉を耳にしながら僕らは呆れて彼女の手を引く。
「良いから乗るよ。パパとママに会いにいくんだから」
「えぇ〜圭子と凛だけで良いじゃん!私も行く必要ある!?」
「あるの。家族揃ってじゃないとダメでしょ?」
「何がダメなの!二人が結婚することはリモートで了承してもらったじゃん!」
聖子は駄々をこねると飛行機に搭乗したがらなかった。
「だからこそだよ。ちゃんと家族揃って挨拶しておきたいんだ」
僕が口を開くと聖子は口を尖らせて仕方なさそうに頷く。
そこから長いフライトの末、目的地に到着するのであった。
海外の幻想的な風景の中、僕と田丸家は顔を合わせていた。
「圭子さんと結婚させてください」
僕は圭子の両親に開口一番でその様な言葉を口にすると軽く笑われる。
「話には順序ってものがあるだろ?」
圭子の父親は呆れるように笑うと僕を家の中に招いた。
リビングのテーブルに腰掛けると彼女の両親は僕と向き合う。
「きっと圭子が無理を言ったんじゃないか?」
「それは…」
「その反応を見るとそうなんだろうな。でも覚悟を決めたのは君なんだろ?」
「はい。その覚悟は揺るぎません」
圭子の両親は軽く頭を悩ませると一つため息を付いた。
「娘たちから話は聞かせてもらっているし。私達も反対はしない。それでも大変だぞ?」
「覚悟の上です」
「口で言うのは容易いな。それをこれからの態度で証明してくれ」
「はい。了承して貰えたってことでしょうか?」
「そこは聞かないのがスマートなんじゃないか?」
「ですね。ありがとうございます」
僕と圭子の父親との会話が終わると彼女の母親が料理をテーブルに運んだ。
「さぁ。家族揃って食事にしましょう」
僕らはそこから今までの二人の馴れ初めなどを話しながら食卓を囲むのであった。
「ちょっと外出てくる」
僕と圭子はふたりきりになる為、外に出る。
海辺の近くを散歩して今までの自分たちを思い出しながら感慨に浸っていた。
「あれ?圭子じゃない?」
そこに海外では聞き慣れない母国語が聞こえてきて僕らはそちらに目を向ける。
「来栖じゃん!久しぶり!」
「久しぶり!ってか中条も居るじゃん。どうしたの?こんな所で」
「いや…両親に結婚の挨拶に来てたんだ」
「え!?二人は結婚するの!?」
「まぁね」
来栖はあまりの驚きに言葉を失っていた。
「いやぁ…おめでとう」
「ありがとう。来栖は元気してた?」
「うん。超元気!こっちは私の肌に合っていて超快適だよ」
「それは良かった。また来ると思うからその時はちゃんと遊ぼうね?」
「うん。私はこれから仕事だから。じゃあまたね」
そう言うと久しぶりに会った友人は急ぎ足でバスに乗り込むとその場を去るのであった。
「来栖も元気で良かったね」
僕の何気ない言葉に圭子は嬉しそうに微笑んだ。
「ホントだよ。何事もなく幸せそうで安心した」
「そうだね」
僕らはそこから他愛のない会話を繰り返しながら海辺を散歩するのであった。
卒業式がやってきて最後にカレンは僕に告白をしてくる。
「これで最後です。私のものになってはくれませんか?」
それに僕は首を左右に振ると左手をカレンに見せる。
「この通り本当に結婚するんだ」
「そうでしたか…おめでとうとは…」
「言わなくていいよ」
「これでさようならですか…?」
「そんなことないよ。僕らはずっと幼馴染でしょ?」
「それじゃあ物足りないんです」
「それでも…僕はもう圭子のものだから」
「そんな…それじゃあさようならじゃないですか…」
「そんなことないよ。友人として元クラスメートとしていつまでも関係は続くでしょ?」
「そんな…」
カレンはそこで涙ぐむと初めて僕の前で涙を流す。
「ごめんね。僕にはもう泣くカレンさんに手を差し伸べることは出来ないから」
そう言うと僕は残酷なことをするようだがカレンを置いてその場を後にする。
教室で僕を待っていた圭子の手を取ると僕らは帰路に就く。
結婚式はいつかお金を貯めてからということで話はまとまる。
僕と圭子は同棲を始める。
と言いたかったが…。
そこには面倒な妹の聖子もいた。
「今更、私だけ仲間はずれにしないでよ!」
その言葉を耳にした圭子は呆れるように嘆息すると僕に向き合う。
「ね?身内に面倒でしつこいのが居ると困るでしょ?」
「………」
僕は言葉に詰まってしまうがどうやら聖子は言った言葉を曲げる気はないらしく僕らとともに暮らすことになった。
僕と圭子は同じ大学に通い、聖子もギリギリ同じ大学に合格する。
三年時に圭子が聖子に必死で勉強を叩き込んだ。
僕らは無事に学生結婚を果たすのだが…。
大学生の時も社会人になってからもトラブルには見舞われる…。
だが…その一生を幸せなもので終わらせるのであった。
余談だが、関川涼子は希望先の進路に進む。
梶響と品野紅は大学を卒業すると就職をして数年で相手を見つけて結婚をした。
当時のバイト仲間だけで集まって遊ぶ機会は多くなかったが少なからずあった。
柏崎カレンとミレイは未来では、ふさわしい相手を見つけて僕のことなどすぐにに忘れるのであった。
ちなみにだが聖子は僕ら夫婦の世話になり続けるのだが…。
それはまた別の機会で。
僕のもとに訪れた最高の出会い。
付き合った翌日にすっぴんを晒してくれるような、本来の自分を見せても良いと思えてもらえたそんな出会いに感謝して。
僕らはいつまでも幸せに過ごすのであった。
完
学校一の人気者に告白してOKもらったのに…なんで地味な女子と付き合うことになってるんだ!? ALC @AliceCarp
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