4.5 『桜』

第1話

 あの日現れた猫の怪物。

 現場となった県では神職や住職、霊媒師などの対幽霊の専門家が県庁のある部屋に集まり、その怪物に関する会議が開かれていた。


「重紙は遅れてくるそうだ」

 議長である『黒松くろまつ』は言った。


「すみません、遅れました」

 重紙灯は会議室の扉を開けて入った。

 周りがザワつく。あの怪物を所有していると噂されている。

「静かに! 噂に踊らされるのは我々の界隈が最もやってはいけない」

 黒松は怒鳴った。とんでもない覇気だ。みんな萎縮した。

『黒松蓮華れんげ』37歳。この若さにして、なんていう統率力だ。


「今回は、例の猫の怪物についてと、例の宗教団体についての報告だ。質問があれば最後に。まず、怪物についてだ。」


 灯にとっては、らのの処遇が決まるわけだから冷や汗が止まらない。


「あの怪物の本体はほとんどオーブであり、1度世に顕現した時もオーブを主体とした暴走をしていた」

 あの爆発する花弁の技のことか。なんたって誰がそんなのを見て報告したんだ。両木か?

「この特徴から、霊体と同じものだと定義される。我らの界隈では霊体を『花』と言い、名称を付ける際は花の名前を付ける。奴が現れたのは4月。よって4月に咲く花から、奴の名称を『桜』とする」


 いや、そんな桜だなんて。桃色が似合うような子じゃない。


「桜は再び顕現するまでは特にこちらからアクションを出さなくていい。だがまた奴が顕現した時に、我々は総戦力で桜の退治をしなくてはならない。」


 つまり、らのが100%の力を取り戻してしまったら、県内の全戦力と相手にしなくてはならないと。


「そしてもう一つ。モドス教についてだ。現段階では、拉致や洗脳などの報告がある。……。」

 と、つらつらと色んな報告などを聞いていた。モドス教の脅威は正直知っている。うちの依頼者にはモドス教の被害者も多い。


 と、50分ほどで会議は終わり解散となった。

 今日は敢えて魔導書を家に置いてきた。このピリついた空気でもし魔導書を見られ、らのの事がバレればやばかっただろうな。

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彩しい猫 莉夏 @kusomameko

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