エピローグ 大切な

 中学生にあがってすぐ、姉が死んだ。

 ろくは教室で孤立した。


「一家シンジューだって」


 耳にするのは自分の悪口ばかり。陰口ばかり。




 気がつけば、屋上に来ていた。

 下を見る。目に入るのは広いグラウンド。

 ここから飛び降りれば、姉さんのところに……。


「待って」


 キジトラの猫を連れた姉の友人が、息をきらせながら走ってきている。


「私が倍返しするから。佳恵かえちゃんの代わりに絶対助けるから」




 その人の力により、録への悪口はやんだ。

 その後もその人はなにかと録の世話を焼いた。

 強そうに見えてもろく、弱々しそうに見えてたくましい人だった。

 いつも姉のことを気にし、なやみつづけている、まっすぐな人だった。

 その人から目が離せなくなった。守ってあげたいと。

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呪詛返しの呪詛師 Meg @MegMiki34

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