ブックマスター(仮)光と闇の娘

白熊堂

神話と物語の始まり

神話 


 最初、世界には何も有りませんでした。


 そこには暑さも寒さもなく、音すらも無い世界でした。


 そこには時間の流れすらなく。


 誰も居ません。


 『それ』が目覚めたのは何時の事かは分かりません。


 『それ』の目覚めにより、世界に時間が生まれました。


 『それ』は上下も無く、寒くも暑くもない世界で長くたゆたい、寂しさを感じて自分以外の何かを求めました。


『それ』がさまざまな感情を生み出し、世界に溢れて光が生まれ、『それ』は闇と呼ばれるようになります。


 闇は光と暖かくて時に寒い世界を生み出しては仲良く見守り続けました。


 そうして幾千、幾万、幾億の時を過ごすと、世界に命が生まれます。


 世界に生まれたのは小さな小さな命でしたが、闇と光は時に優しく、時に厳しく、命の行末を見守り続けました。


 命は世界に散らばると、それは光と闇の力を吸って大木となり、獣となり、様々な形をとりだします。


 様々な形をとっては滅び、滅んでは新たな命が生まれていく中、闇と光はお互いに生き物を創ろうとしました。


 闇は自らを真似て魔を創り、光は自らを真似て天使を創り出します。


 それらは仲良く共に手を取り合って世界に文化と文明を創り出しました。


 闇と光は仲良く文化と文明を眺め、神と呼ばれるようになります。


 しかし、神と呼ばれたのは光だけでした。


 闇は常に光の下に有り、人々は光のみを神と崇めて闇は一人ぼっちになります。


 そうして、人と呼ばれるモノが生まれると、ますます光は闇から遠ざかりました。


 闇は一人ぼっちの寂しさを魔を生むことで癒やします。


 光の神は天使と人、闇の神は魔族と魔物を生み、お互いに争わずに境界を定めてのどかに暮らしていました。


 やがて、闇は魔界を創り、魔族の楽園を創ります。


 光も天使を中心とした楽園を創り出しました。


 光の楽園の住人は短い命なので常に新しい命を生み出します。


 そうして、長い時が流れ光の楽園が溢れます。

 

 闇の楽園は世界の半分ですが魔族も魔物も長い命を持つのでゆっくりと世代を交代したので楽園は溢れませんでした。


 人で溢れた光の楽園は、豊かな闇の楽園を羨みだします。


 そして光の民は闇の楽園まで生存圏を拡げていきました。


 最初、闇は光と話し合いをして、仲良くお互いの種族を住まわせる事として決まりを創ります。


 お互いに争いはしない事、これがルールでした。


 しかし、残念ながらルールは一方的に破られてしまいます。


 光の民が闇の民を虐げ、そして自らの財として奪う事を覚えてしまうのでした。


 闇の神は光の神と話し合いをしましたが天使達が勝手に動き、光の民よりも闇の民は劣るモノという間違った教えを広めています。


 これには闇の神も怒り、本来有った境界で世界を区切り、光の民を追いやりました。


 光の民は増えすぎて新たな土地を求めて争いあいます。


 闇の民は再びのどかに暮らしていました。


 光の世界には国が出来て新しい技術が生まれ、闇の世界には原初の力が未だに存在しています。


 光の民は闇の世界に行く技術を創り出しました。


 闇の民は原初の力、魔法で対抗します。


 再び闇と光の争いが起こると、天使の中から光の神に失望して闇の側につくものが現れました。


 闇からは魔物を創り出して光の世界に送り出します。


 そうして混ざりあった世界に闇の神は降り立ち、光の神は自らの写身である赤子を降ろしました。


 闇の神は光の民と闇の民を率いて再び楽園を築き、光の民は国を造って闇の神の楽園を襲い続けました。


 闇の神は光の神に注意しますがルールは既に破られています。


 闇の神は最後の選択で世界を七つに割ってしまいました。


 その上から3つは光の神の世界、下から3つは闇の神の世界として、真ん中の世界はどちらのモノでも無い世界を創り出します。


 そうして、闇の神は騎士に姿を変え、地上を歩いていると美しい娘を見つけ恋をしました。


 美しい娘は光の神の写身でしたが、闇の騎士と番となり仲良く暮らします。


 しかし、どちらのモノでも無い世界には国が有り、王と呼ばれる者が生まれていました。


 王は傲慢であり、全てを手に入れようとします。


 闇の騎士が治める楽園に王の兵士が来て、美しい娘は連れ去られました。


 闇の騎士はそれを嘆いたものの、光の民の地に美しい娘が帰ったのだと諦めようとします。


 しかし、美しい娘は闇の騎士への愛が強く、醜悪な王の求愛を拒んだ為に火刑に処されそうになりました。


 火刑の話を光の神から聞いた闇の騎士は一人で王の前に現れ兵士をなぎ倒して美しい娘を取り返すと、2度と王に闇の楽園には訪れるなと命じました。


 再び、闇の楽園で仲睦まじく生活をおくる闇の騎士と美しい娘に新しい命が宿る頃、再び醜悪な光の民の王が闇の地に軍を送り、美しい娘や楽園の善良な民を縛りつけて火を放ちます。


 闇の騎士は光の神に雨を降らせて火を消すように頼みましたが光の神は動きませんでした。


 闇の騎士は怒り狂い、一つの朱い目のような闇の神に戻ると王達に呪いを掛け、急いで善良なる人々の火を消し、楽園を世界から切り離します。


 呪いを掛けられた王と軍は醜い豚のような姿となりました。


 そうして、この世界が生まれましたとさ。




「お話はこれでおしまいよ」


「ママ、この一つ目の闇の神様が私のパパなの?」


「そうよ。だから、みんな足が黒いの」


「ふーん、だったら私がパパとママを助けてあげる!」


 少女は光と闇の神の写身であり、様々な本に書かれた悲劇を変える力が有りました。


 本は様々な世界から集まってきます。


 美しい娘から母になった神の娘は力を失ってベッドの上に常に寝ているようになっています。


「どうかな?私はもう一度パパに会いたいわね…」


 そう言うと、安らかな顔で眠るように息を引き取りました。


 少女は様々な本を探しては悲劇から救った仲間

、例えば倒されかけた世界樹の化身、例えば悪者に捕まった火竜の姫などの力を得て、自分達の悲劇を終わらせる旅に出ます。






おしまい。


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