第22話 エンターテインメント好きの学年ビリ
「さて、もう一つ懸念しとることは君らのエンターテインメント性」
「わ、私達のえ、エンターテインメント性?」
「ステージに立って歌を、しかも英語のオリジナルソングなんて何にもなしに、ここの生徒が見るわけなか」
「確かにそうですね。流石よくわかってらっしゃる」
「透子、そろそろ僕らは戻ろう。まだ終わってないだろう」
掴の指摘に面白そうだとうんうんと頷く透子の肩を誠が叩いた。もう少し参加していたいが、誠の言うことも正しい。透子は残念そうに話し合いをする後輩達を見た。
「そうだね。では、お邪魔しました。頑張ってね」
「あ、も、もう行っちゃうんですね」
透子は後輩達に見送られ、教室を出て行った。誠は何か言いたそうに数秒視線を動かしていたが、諦めたのか黙って透子の後を追っていってしまった。そんな様子を気にすることなく、掴は話を続けた。
「君らの中で歌とかそういう経験者、おる?」
掴が問うと、四人はわかりやすく黙り込んだ。予想通りの反応に掴は腕を組んだ。
「実は一人、こういう表現に強い奴を知っとるけん、そいつに話してみる。でも、協力してくれるかはわからん」
掴が提案すると四人はわかりやすく目を輝かせた。
「わかりやすいな、君ら。じゃ、放課後ここに集合しとって。勉強会が終わったら連れてっちゃる」
四人は力強く頷いた。
放課後、掴が四人と共に訪れたのは二年生の教室だった。放課後勉強会が終わった後のため、生徒は殆どいなかった。
「目立っとる」
掴は呟いた。いつものようにカツラを身に着け普通の生徒のように装っているが、如何せん彼の後ろを歩いているのは入学早々話題になった、この学園では悪名高いトラブルメーカーズだ。掴がいくら普通でもトラブルメーカーズを引きつれているとなると目立つのは当然のことだった。しかし、覆水盆に返らず。引き返すこともできない。掴は仕方がないとポケットから返されたばかりのスマホを出して、電話をかけた。
「今、どこおる?二年視聴覚室?おぉ、今から来るけん、そこおって。じゃ」
スマホをポケットにしまって掴は四人の方へ振り返った。
「この階の視聴覚室におるって」
「先輩、その人ってどんな人なんですか?」
「二年生の階ってことは俺らの一個上ですか?」
「だ、男性ですか?」
「向こうは俺らが来ること、知っているんですか?」
歩き出す掴を左右から囲むように遊子達は尋ねた。
「名前は
翡翠蛍太郎。エンターテインメント好きで学年ビリの成績の男子生徒。その少々オーラのある紹介に四人は緊張した面持ちで視聴覚室に訪れた。
「蛍太郎、おるー?」
教室のドアを開けて掴が入ると、四脚並んだ入る椅子の上で寝ている男子生徒がいた。
「あぁ、掴先輩、お久しぶりっすねぇ」
起き上がった蛍太郎は掴の後ろに立つ四人を見て微笑んだ。タレ目で細い瞳がさらに細くなった。
「有名人を引き連れて俺に何か用ですか?」
椅子から立ち上がって面白そうだと近寄ってきた蛍太郎は猫背気味だが、高身長だった。サラサラと前髪を揺らしながら口を開けて呆然と立っている後輩達を楽しそうに見つめている。
「エンターテインメント好きの蛍太郎に聞きたいことがあるけん、ちょっと時間をこの子らにくれん?」
「いいですよ、面白そうだ」
遊嬉宴楽は誰でもできる! 小林六話 @aleale_neko_397
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