それ故に

清流

それ故に

「君は全てだ」「そう」

「何故に拒む」「何故かしら」

「穢れさせたくない」「性、姿、格、血、私は非想天には逝けないわ。」

「キリストも、仏陀も、天照も、ユダヤも、アッラーも、見捨てなよ。」「ならその代わりに、私を穢してよ。」

「あゝそれ故に、海にでも行こうか。」「えゝそれ故に、征きましょう。」


私は小さい頃から「化け物」と呼ばれていた。

痛みを感じる事ができず、伴って人に共感する事もできなかった。

なるべく、一端の人間らしく居られるように努力はしていた。それでも、感情を理解できなかった。


そんな私は七五三を終えるより前に、精神科へ連れて行かれた。精神科へと向かう時も、親は化け物を見るように、目が揺らいでいた。

医者は痛覚がない事が珍しかったのか、大層に執着をあらわにしていた。そんな医者とのカウンセリングが、高校生になっても続いていた。


ある日、医者はこう言った「君を殺したい」と。「つまらないでしょう、こんな人間を殺したって。」そう言うと医者は「だからこそだよ、代替性の無いもの程、価値が上がる物だ。」そう言い返してきた。

私はこれが人の感情であり、やっと人になれるのではないか、いやそうだろう。と信じさせた。


だが医者は殺そうとしない、頼んだとしても殺そうとしなかった。そんな時間を過ごす内に、死の側という境遇だからなのか、不思議と恋慕に厭世が果せていく。

いずれ死ぬのが怖くない事が、一緒にいたい気持ちになった時に、医者が私の目を覚まさした。


「君は全てだ」「そう」

「何故に拒む」「何故かしら」

「穢れさせたくない」「性、姿、格、血、私は非想天には逝けないわ。」

「キリストも、仏陀も、天照も、ユダヤも、アッラーも、見捨てなよ。」「ならその代わりに、私を穢してよ。」

「あゝそれ故に、海にでも行こうか。」「えゝそれ故に、征きましょう。」

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それ故に 清流 @seiryu-116

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