彼女たち 友人または同志
あんらん。
友人または同志
彼女はうんと年の離れた友人だ。(今年傘寿を迎えたとのこと)
五十年前大学職員を辞し自然農法の運動に参加し同時に陶芸家の道を志した人。
今、海と山に囲まれた土地にご主人と工房を建てて暮らしている。
隣が娘さん一家というそこでの暮らしはもう二十年になるという。
彼女とはずい分前に参加した地元の読書会で出会った。
陶芸家という職業に馴染みがなく興味津々でお付き合いをさせてもらっていた。
その後事情があってわたしは一旦退会するが九年前復帰し再会した。
復帰してからの会は以前に比べなんとも覇気がなく何だか後ろ向きに見えた。
それでも彼女にはなぜか以前よりも本に対する姿勢に共感でき、毎回会えるのを楽しみにしていた。わたしは彼女のその旺盛な知識欲に惹かれた。
仏語、着付け、フラワーアレンジメント、古代文字、東南アジアへのボランティア・・・・・・・・。
高いアンテナを張り好奇心の赴くままに進む彼女に惹かれた。
なぜだか彼女もわたしの話しに興味を持ってくれて大いにふたりで盛り上がった。
で、彼女の発案により「学ぶ会」を始めることになった。ふたりきりの。
会の名前を「アンラン」とした。
それは、仏語勉強中の彼女が教えてくれた「学びあう」という意味の「アンラーン」それがとてもぴったりだと思ったからだ。
その後ネット投稿を始めるにあたりペンネームを思いつけなかったわたしはそれを拝借した。
「学びあう」。「勉強する」「学習する」とは違う「学び」「学ぶ」。
語感がいいよね。とふたりで笑った。
ひとりで「学ぶ」ことも重要だが、お互いが得たものを持ち寄り語り合う。
それがいろんな気づきになりつながり視野が広がる。
滋養のある食事をした気分になり心が満たされる。
時間を忘れて語り合うことの楽しさは至福の時といえる。
これまでの人生で楽しいことばかりでは決してなかっただろうが、彼女はどんなことも「学び」に変えるしなやかさを持っている。
時間を忘れすぎ気付けば六時間を超えている。
おばさんふたりが何をそんなに熱く語っているのだろうとたぶん周りは(家族も含めて)不思議だろう。
会も今年で三年目になった。
再会して出会い直すなんてこともあるのだなとつくづく人の縁の妙を感じている。
読書のジャンルが児童文学と時代小説に偏っていたわたしに彼女は、エッセイや学術書、海外で活躍する日本人作家の世界を見せてくれた。
イタリアの風景を綴る内田洋子の文学的エッセイ、ドイツで活躍する今一番日本人でノーベル文学賞に近いといわれる多和田葉子、アメリカでは夏目漱石の『明暗』続編を手掛けた水村美苗。チェコのカレル・チャペック、イタリアのジャンニ・ロダーリ等々・・・
わたしの本の世界を広げてくれた彼女は友人であり同志なのだ。
彼女たち 友人または同志 あんらん。 @my06090327
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