第43話 最強秘密兵器

私達に続き、ポール団長とゴリゴリマッチョ精鋭部隊も外へと飛び出した。


マルリは団長の肩に乗っているのが見える。


ズドーン!ドン!!


私達が全員外に出たタイミングを見計らったかの様に、間一髪で3階の部屋は破壊された。


敵は何処?


私達3人は宙に浮いたまま、敵を探す。


団長達は庭園の大木に飛び移って様子を伺っている。


皆ゴリゴリマッチョの上、身軽なので驚いた。


「ジル、見つけた?」


「いやいやいや待って、アリス飛べたの!?」


ジルは私が彼と同じ様にふわふわ浮いていることを驚いている。


「ええ、少しなら、長時間は無理よ」


「ジルフィード、魔法使いは2人いる」


陛下はジルの横で建物を見つめながら言った。


「2人ですか」


「ああ、そうだ。私はあの黒いマントの方を倒す。お前達は黒い帽子の方を頼む」


「父上、その必要はありません。アリス、魔封じを頼む」


「はい」


私は、魔力を吸い取る魔法陣を素早く組んで発動させた。


浮かんでいた魔法使いは突如ストーンと地面に落ちる。


「何!落ちた?」


陛下は、驚きの声を上げた。


「はい、魔法使い達の魔力を吸い取りました」


「そんな事が出来るのか?」


「はい、出来ます」


私は即答した。


「ジル、飛んでもない秘密を隠していたな」


陛下の言葉に、ジルはニヤッと笑う。


「ええ、最強秘密兵器ですから」


「アリスティア嬢、ありがとう」


「いえ、どういたしまして」


「ポール!魔法使いは魔力切れだ!!捕まえろ」


陛下は木の上で待機していたポール団長達に指示を出した。


「了解です!!行くぞー!!」


「イエッサー!!」


掛け声よろしく、体格の良い男達は一目散に落下した魔法使い達の方へ向かう。


「ロダン伯爵は?」


ジルが呟いたので、私は館内のサーチをした。


「建物内に居ます。誰かといますね。2階の破壊されている場所です」


「よし、私達も向かおう」


陛下はスッと姿を消した。


「ああ!周りの確認をしながら移動した方が安全なのに!!」


ジルが吐き捨てる。


「アリス、僕達も行こう」


私はジルの言葉に頷き、一緒に2階の破壊された場所へと向かった。




 私は爆弾の処理を終えて、気が緩んでいたのかも知れない。


破壊音と振動を感じ、魔法使いが居ると気付いた。


敵も最後の足掻きだ、どんな手を使って来るかは分からない。


サーチすると爆破されたのは2階の中心に近い部屋だった。


「まさか!」


殿下とアリスティアを潜ませた部屋では無いのか?


私は焦り、確認に走った。


部屋を覗くと室内は滅茶苦茶になっていたが、幸い誰も居なかった。


「良かった」


安堵した次の瞬間、私の心の隙を狙うかの如く、物陰から飛び出した魔法使いは業火の渦を私に向かって放って来る。


私は咄嗟にシールドを張った。


ドーン!!と言う音と共に業火は砕け散った。


魔法使いは舌打ちをして、外に飛び出す。


私は反撃する為、外にいる魔法使いを追おうとしたところで、後ろから声がした。


「何が新しい宰相だ!田舎貴族め、偉そうにしやがって」


振り返るとブルボーノ公爵がそこに立っていた。


私は警戒し、睨みつける。


「おや、私を見ていて良いのか?後ろから攻撃されるぞ」


嫌な微笑みを浮かべて、ブルボーノ公爵は高笑いをする。


悍ましいという言葉がピッタリな御仁だ。


「全く問題ない。私とあの魔法使いでは勝負にもならない」


私がキッパリ言い放つと顔を歪める。


実はアリスが周辺の魔力を吸い込み始めていることに私は気が付いていた。


そして、最高のタイミングで、後方の魔法使いが落下した。


「な!何だと!?貴様何をした」


ブルボーノ公爵のさっきまでニヤニヤしていた顔が急に青ざめて来る。


「もう、あなたの傲慢は裁かれる時が来た。観念したらどうだ?」


私は諭すように話しかける。


「うるさい!!この国は私のものだ!田舎貴族が余計な事を言うな」


「いや、この国は民のものだ。お前のものではない!」


陛下は私の横に姿を現し、ブルボーノ公爵へ強い言葉を吐いた。


「な、陛下。陛下はこの男に騙させているのです。私はこの国のために働いて来たのです」


この後に及んで、己の保身を恥も無くと訴えるとは、、、。


「五月蝿い!言い訳などさせぬ。ブルボーノ公爵及びブルボーノ公爵派の貴族に家門の廃止を言い渡す。今までに積み上げた罪は裁判にかけ、キチンと償ってもらう」


陛下はブルボーノ公爵へ厳しい口調で伝えた。


「そんな、私は王妃の父なのですよ。陛下!!」


まだ何とかなると思っているのだろうか?


「ダリアは離島の修道院へ自ら行った。生きているうちには戻らない。我が国に王妃は不在となった」


この陛下の言葉を聞き、漸く自分には後がないと気付いたのか、ブルボーノ公爵は懐に手を入れる。


「危ない!」


私が声を上げるのと、紫の鎖がブルボーノ公爵をぐるぐるに巻き上げたのは同時だった。


「殿下、アリスティア!」


「お前たちは最高のタイミングで駆けつけたな」


陛下が笑い出す。


ジルフィード殿下は冷静にブルボーノ公爵へ猿轡もした。


「父上、ようやく終わりましたね」


殿下が陛下に話しかける。


「ああ、長かったな」


陛下は噛み締める様に答えた。


「ロダン伯爵。いや、宰相も鮮烈デビューだったな」


私の方を見て陛下が茶化して来る。


「ええ、まだ色々と秘めていますけどね」


私も負けずに返す。


「頼りにしている。よろしく」


「何だかお父様と陛下は良いコンビね」


アリスティアの呟きで、全員が笑った。


誰も怪我せず、無事に大捕物が終わって、本当に良かった。



 外に出て、お宿の建物を見上げると、ボコボコになっていた。


これでは使い物にならないだろう。


「ジル、このお宿も悲惨な状態だわ」


「自業自得だから、仕方ない」


ジルは涼しい顔だ。


「殿下ー!!捕縛は終わりました。そして、王都への護送隊も到着しました。我々は、いつでもロダン領へ出発が出来ますよ」


エドワードは溌剌とした笑顔で報告しに来た。


「よし!では私達は王都へ戻るとしよう。いや、助っ人は楽しかった。エドワード、また困難な時は私達を呼んでいいぞ」


「いえ、陛下を呼びつけるなどという一大事はもう起きない様、第二騎士団一同頑張ります。来なくて良いです」


ん?最後に本音が入っていた気がするけど、陛下も笑顔だから良しとしよう。


「アリスティア、ロダン王城の皆に宜しく。それから私は宰相の仕事で忙しくなるが、メルロー皇子の教育を請け負ったからには、ちょくちょく行き来することになるだろうとジュリアンに伝えておいてくれるか?」


「はい、分かりましたお父様。伝えておきます」


「では、陛下戻りましょう」


陛下と父の姿は私達の目の前からあっさりと消えた。

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