第18話 王宮へGO!
いよいよ皇帝陛下に謁見することになった。
とはいえ、ジード様は皇子だから単に身内に会うだけなのだけど、私は違う!
何せ、デビュタントもしていないド田舎の伯爵令嬢なのである。
緊張しない方がオカシイ!!
「アリス、大丈夫?」
王城へと向かう馬車の中で、綺麗に正装をして緊張でカチカチになった私にジード様は心配して声を掛けてくれる。
しかし、ド緊張中の私には響かない。
「アーリス?」
いつもと逆の状態である。
残念ながら、癒し系マルリはお家でお留守番なので、ここは二人で解決するしかないのであった。
ジードは向かいの席からから、アリスの横に移動して、緊張している彼女の背中を撫でていた。
「ジード様、失敗したら報酬無しですよね」
ボソッと私が心配の種を口にする。
「報酬?」
ジード様が私の背中を撫でていた手を止めた。
「アリス、、、大丈夫。アリスが思っているより、アリスは、、、」
そこで言葉が止まった。
えー、気になるじゃん!何で続きを言わないの?
「えっ、何ですか?続きが、とても気になります」
勿論、聞き返した。
「、、、賢い」
「いやいや、ジード様、何か隠しましたね。もうこの状況で言い淀むなんて、意味深なこと辞めてくださいよ。とても気になりますけど、取り敢えず褒めてくださりありがとうございます」
賢いと言う発言にお礼を述べた。
無駄に言葉数が多くなってしまうのも緊張のせいだろうか。
陛下相手に余計なことを口走らないようにしなければ、、、。
思考の世界に沈んでいると急にギュウっと抱きしめられた。
「え?」
現実を見ると間近にジード様の顔があった。
「アリス、考え事?」
少し不機嫌?
「ええ、そうですね。失敗しないようにと考えてました」
「ふーん、失敗してもいいのに」
は?何を言い出すのよ猫皇子。
「いや、ダメですよ。報酬が掛かってます」
私は真剣に言い返した。
するとギュッと私の両頬をジード様が両手でロックして来た。
「報酬の話は一旦忘れて。今は僕の婚約者だろう?」
「忘れたら、頑張れません!」
私が負けずにそう言うと、私の唇にガブっと噛みついてきた。
噛みついたって言っても嚙まれたわけではないけど、彼は私の唇をフニフニ好き勝手に、、、は?キスしてる。
えええ、何でキスして来た?
これも仕事の一環?
はぁ?いや違うでしょう。
ここは馬車の中なのよ。
プライベートな空間でする必要ないじゃん。
私の頭はパニックを起こした。
ジード様の肩をバンって右手で叩いたら、ようやく彼は私の唇から離れた。
彼の唇付近には、しっかり私の口紅が付いてしまっている。
「あのー、何から怒ったらいいかも分からないくらい意味がわかりません」
私はため息を付きながら言った。
「愛する婚約者と馬車に乗ったら、キスくらいしたいと思った」
曇りなき眼でそう言ってくる猫皇子。
「そのお顔どうするんです?口紅が、、、」
「このままで降りて注意された方がいいよね」
はぁ、ため息しか出なくなりそう。
「私の大切な唇は高くつきますよ」
思わず、ジト目で睨む。
「アリス、嫌じゃないの?」
ジード様が聞いてくる。
「いえ、嫌じゃないですけど化粧が崩れてしまったこととか、心配は増えました」
本音で答える。
「ふーん、逃げないんだ?」
何だか嬉しそうな、その様子は何なのよ。
そして、このセリフはデジャブ?
「前にもこのようなやり取りをした気がしますが、私は逃げませんよ」
「分かった」
全く悪びれてない様子にガックリしたけど、確かに馬車を降りた時に多少は恋人感が出るかもしれないと思った私は、清き乙女とは言えないのかもしれない。
馬車は王宮のロータリーに入って停車した。
ドアが開けられて、先にジード様が降りて、私に手を差し伸べる。
結局、彼は私の口紅がついたままだけども、、、。
もう、なる様になれとしか言えない。
手を引かれてステップを降りると沢山の人が待ち構えていて、自然と拍手が沸き起こった。
横のジード様を見ると、侍女らしき人からハンカチを渡されて口元を拭いている。
ふむ、コレが狙いだったのか。
続けて私の後ろからも、そっと肩を叩く人がいるので、振り返ると簡単なメイク道具を手に持った侍女だった。
彼女は瞬く間に私のメイクを直してくれた。
「ありがとうございます」
私はお礼を小声で伝えた。
「ご婚約おめでとうございます」
にっこり笑顔で返された。
プロの侍女ってスゴイ。
私たちは、しばらく立ち止まって、周りに集まった人達に挨拶をした。
ジード様が先に貴族の方のお名前を呼んで、私を紹介してくれる。
「私の婚約者のアリスティア・ロダン伯爵令嬢です。どうぞよろしく」
私は相手の名前と顔を覚えることに集中出来て助かった。
急に決まった事なのに、かなり多くの貴族の方々が来られていて、ジード様は次世代を担う方なのねと実感。
最後に私たちが王宮に入る直前に、ある御仁が声をかけて来た。
私たちは足を止める。
「ああ宰相か、紹介しよう。彼女が私の婚約者アリスティアだ」
ジード様は私を紹介した。
「殿下、急な話で驚きました。アリスティア嬢、私は宰相をしております公爵家のランディ・ブルボーノと申します。以後お見知り置きを」
あー、この人か!!と私は内心で色々考えながら、それを表に出さないように最高の笑みを作る。
「初めまして、ロダン伯爵家のアリスティア・ロダンと申します。どうぞよろしくお願いします」
挨拶の言葉を言った後、丁寧なカテーシーをした。
「まぁ、素敵ね」
少し離れたところにいたご婦人の声も聞こえたので、まあまあ上手く出来たかもしれない。
顔を上げると嘘くさい笑顔の宰相が見えた。
「さぁ、アリス、陛下のところへ」
ジード様はタイミング良く宰相の前から私を連れ去った。
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