後編 ずっと求めてきた相棒
今日も街の外、岩場に身を潜めて獲物を待っている。
ソロに見えるが、相棒と一緒だ。
「来たぞ、シリウス」
# 魔獣名 ゴロゴロポン
# 甲殻型魔獣 土属性 体当たりが得意
# 直径1メートル23センチ 体重123キロ
# 弱点は 水属性
# 討伐対象に間違いありません
頭の中に、渋い男性の声が聞こえてくる。
「行くぞ、相棒!」
◇
冒険者ギルドに戻り、リザーゴンを討伐した動画を見せ、賞金を受け取る。
「建築作業用の搭乗型機械人形、これを買いたい」
ギルド備え付けのカタログを開き、受付嬢に見せる。
「え? 冒険者を辞めるのですか?」
受付嬢が驚く。当然だ、普通の冒険者は、こんな物は買わない。
「魔獣討伐に使う」
「建築作業用の搭乗型機械人形、これにリモコンユニットも付けてくれ」
◇
工房で、機械人形を受け取る。
「意外と身長が高いな」
ゴーレムを細身にした感じだが、パワーは保証付きだ。
# 身長 2メートル00センチ 英雄ジャイバーバ様より8センチ低いです
「これを、シリウスの体にする」
# 了解しました、リモコンユニットを支配下に置きます
「調子はどうだ?」
# 体を動かすのは、初めてですので、調整に30分下さい
◇
今日も街の外、岩場で身を潜めて獲物を待っている。
ソロではない。機械人形の相棒と一緒だ。
「来たぞ、シリウス」
# 魔獣名 クッセーダマ
# 甲殻型魔獣 火属性 全周囲への毒ガス攻撃が得意
# 身長 1メートル23センチ 体重1キロ 浮遊状態
# 見た目はゴロゴロポンと同じですが、中身がガス状の風船です
「攻略方法は」
# 魔法で攻撃すると爆発し、周囲のものを吹き飛ばします
# ガスマスクを着けて、剣などで穴を開けるのが一般的です
「シリウス、その体で攻撃しろ」
# 了解です
機械人形が起動する。消音型だが、少々音が出るのが欠点だ。
岩で足場が悪い中、一気に距離を詰めて、一撃!
クッセーダマは気絶し、周囲に毒ガスが散る。
しかし、人が乗っていない機械人形に影響はない。
この点は長所だ。
「よくやった、相棒」
# 朝飯前です
「私たちは良いペアだな」
# ・・・
◇
ギルドに戻ると、受付嬢から支部長室に通された。
応接セットに座り、支部長と向き合う。
「相棒を見つけたらしいな」
相変わらず渋い声だ。
「ああ、待たせたな」
幼馴染ということもあり、無愛想に答える。
「機械人形を買う金で、屋敷くらい買えただろ?」
「私には一緒に住む相手がもういない、貴方が一番よく知っているだろ!」
「すまん、余計なこと言った」
失敗した時に、アゴを触る癖は、昔と変わらないままのようだ。
「受け取って欲しい品がある」
執務用デスクの引き出しから何か出した。
「それは、魔法ネットの指輪?」
「俺に、シリウスからメールが入った」
「え? 聞いてない」
「シリウス、説明しろ!」
# 相棒の定義は、一緒に仕事などをする相手、仲間などです
# しかし、アルテミス様が求めている相棒は、人生のパートナーでした
# そして、私は120時間後に、アルテミス様に取り込まれることが解りました
「消えていなくなるのか!」
# いいえ、アルテミス様は、私を意識しなくなるだけです
# 相棒という立場を、アルテミス様が本当に愛した男性に託したいのです
# 今、心拍数が上がりましたね、それが本当のお気持ちです
「わかったような事を言うな!」
# 私の一部は、すでにアルテミス様に取り込まれおり、記憶の共有化が始まっています
# 封印していた記憶の箱を、開けてください
# アルテミス様が困った時、助けてくれたのは、いつも彼でした
# 彼が困った時、助けるために走り回ったのは、アルテミス様でした
# 若さによるすれ違いはありましたが、そろそろ気がついていますよね
# 幼ない頃から、ずっと求めてきた相棒が、ここにいます
「弟に先を越されて言えなかったが、言わせてくれ」
支部長が私の前でヒザをつきました。
「いまさら、、、」
心を縛っていた力が、だんだん緩み、本当の自分が出てきます。
「結婚してくれ、アルテミス」
新しい指輪が手渡されました。
「じゃあ、約束して、、、私から、いなくならないと」
婚約を前に、突然いなくならないと、、、
「もう私を一人にしないで!」
涙が止まりません。
「ぼ、僕は、いなくなりましぇん」
「うるさい、ふざけるな!」
涙が止まりました。
アゴを触る仕草が、イケメンに見えます。
「これ高かったでしょ? 支部長の給料3か月分?」
「うるせえ、聞くな!」
魔法ネットのダイヤの指輪を付けてくれました。
「似合うよ、きれいだ」
また涙が、、、
━━ fin ━━
あとがき
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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女性最強の若手冒険者の私に、もう相棒など不要だ! 甘い秋空 @Amai-Akisora
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