夏色恋歌

薮坂

夏色恋歌




飛び込むな 浅いプールと 夏の恋

知っていたのに からだは宙に



夏休み 始まりみなに 笑顔咲く

君に会えない 僕は憂鬱



涼しさを 求めて来たる 本の森

君を見つけて 気温上昇



図書館で 本に夢中な 君の横

何食わぬ顔 できているかな



こんにちは 君のセリフに 驚いて

息もできずに 溺れる魚



帰り道 ライムソーダに 口をつけ

一口あげると 君ははにかむ



首傾げ 明日あすも来るのと 君の問い

海に行こうと セリフ間違え



汐風しおかぜに 麦わら帽子 空を舞い

追いし君へと 追いつけるかな



雨宿り 二人を囲う 水の檻

上がる体温 夏の所為せいかな



カレンダー 葉月はづきの最後 マルつけて

君とお祭り 言えぬお誘い



よく似合う 浴衣と髪の 後れ毛が

夜風に揺れて 心も揺れて



恋心 ラムネのビンに 閉じ込めて

覗くビー玉 煌めいた夏



かき氷 掻き込む僕を 指差して

笑いし君の 紅色べにいろの舌



赤青あかあおと 黄色と緑 紫に

花火が染める 君の横顔



光爆ひかりはぜ 遅れて届く 花火の

掻き消してくれ 僕の鼓動を



次は黄か それとも青か 君は問う

僕は答える あかい顔して



好きだよと 言えばどうなる ことだろう

夏は待たない だから儚い



心決めて 君に届けと 瞳見て

最後の花火 恋色に咲く



祭りの後 すくった金魚 真ん中に

星を見ながら 歩調合わせて




二度と来ぬ 夏の終わりを 愛おしみ

二人手繋ぎ また夏を待つ








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夏色恋歌 薮坂 @yabusaka

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