第2話 冒険者ギルド
僕は冒険者ギルドに向かうことにした。
ただ、選択肢がありきたりでつまらない。生きるために冒険者になること。生きるのに困ったら冒険者ギルドに行くって、なんてありきたりの展開なんだろう。
ただ、ここからしか始められないし、ここから始めるんだ。僕のクソゲー人生を。
僕は腹を減らして、センター街の明治通りの最奥にある冒険者ギルドに向かった。明治通り沿いの坂道のコンクリをひいこら言いながら向かって行く。
通り沿いの葉桜の街路樹は夏の訪れと涼やかな日陰を作って僕を祝福してくれている。僕はクソゲー人生をやり切るためのそれは後押しになったんだ。
僕は一歩一歩踏みしめるように渋谷の街を歩きながらすこし浮かれている。
たぶん僕は人生はバットエンドで終わると思う。それがクソゲーであるし、その覚悟を持ってしか人間って前向きに生きられないんだ。
ただ、バットエンドである人生をどれだけその瞬間まで徹底的に楽しみ尽くすかが、人生における重要な要素であると思うんだ。
だから僕は現実の神や魔王を目指す。それがクソゲーを愛する僕の決意だ。現実をすべて自由に創造するような神になったら、どんな明日が見えるだろう。
まもなく、冒険者ギルドが明治通り沿いに姿を現した。
冒険者ギルドはオリンポス神殿と同じ作りで僕の目の前に現れた。
巨大ないくつもの支柱が平たい扁平の屋根を支えている建物の中央には、場違いな小さいスイングドアがついていて、右わきにアポロンの像がある。
太陽神を横目に、僕はスイングドアの中に入った。
錆びた剣の鉄の匂いと、独特の汗臭い空気と、柑橘系の消臭剤の匂いが漂ってきた。
剣士や盾士がその奥に異様な数、ひしめき合うように溢れていた。一瞬だけ大勢がジロリと僕を見た。
チビデブの僕が来るようなところじゃないから、僕は一瞬怯えたけど、僕は未来のクソゲーの魔王か神だ。気にしない。
冒険者ギルドには受付をする黒檀の机が並べてある。
20歳くらいの受付嬢が僕が受付を済ますと奥からやってきて、ベリーショットの赤毛の髪を軽く弄りながら机越しに目の前に来る。僕を見て嫌な顔をされた。
「・・・いらっしゃいませ。なにか御用ですか?」
受付嬢なのに、頭も下げない。
やっぱり浮浪者でキモオタな僕はウザがられる。
白で濃紺の縁取りがある制服を着た受付嬢は形ばかりは礼儀正しそうできれいだ。たぶんこの人の中で僕は人間扱いされていないんだと思う。
まあ、見てろ。いずれクソゲー展開に巻き込んで、地獄の河童踊りを踊らせてやる。
僕は小デブの本音で斬り込んだ。
「僕は魔王になる男だ。仕事を寄越せっ。あんたにはそれができるはずだ」
「・・・あの、あんた浮浪者ですよね? 迷惑です。死んでください」
受付嬢は冷たくて、僕はテンションがダダ下がりになった。ああ。なんたるクソゲー展開。普通は受付嬢はやさしくニコニコなのに。これぞクソゲー。
愛してるぜ。
思わず、屁が出た。
ぷぅ
「屁こくなっ」
僕はでぶだ。なぜか必要以上に緊張しすぎると屁が出る。小学校のときのあだ名は、徳川いえし屁(43)だった。
実にクソゲーマーらしい、僕のあだ名だ。僕は気に入っている。
一瞬だけ間を置いた僕は、これからのことを考えて、受付嬢をまっすぐ見た。いつもはうつむき加減の僕だけど、これからは違う。意志を持って人の目を見て話すんだ。
むう。なんとか受付嬢とうまくコミニュケーション取りたい。
ここは戦闘を行う男たちの職場だ。ビリビリと痛くて冷たい事務的な日本特有の空気があるけど、これを僕は破壊するんだ。魔王になるために。
僕は短髪でチャーシュー抜きのラーメンと恋愛する悪十字のネギ神の物まねをした。
「ごめんなさい。こういうとき、どういう顔していいかわかんないの(にこり)」
「・・・死ねばいいと思うよ(にこり)」
うへぇ。これはさらに嫌われてしまった。
ただ、覚悟はしていた。
粗野な世界の受付嬢は客にならない人間には頭を下げない。
僕は世界をクソゲーにして行くために、受付嬢と仲良くならなければならない。
ぼっちの僕が魔王になるために。
ただ、義務で仕事をしているだけの受付嬢を動かすためには・・・力が必要だ。
実にクソゲー。なんとかできるかな?
ムチャクチャでもなんでもいい。動こう。
僕は立ち上がってホワイトスクリーンに表示されるコマンドから選択肢を選んだ。
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コマンド選択(リンクを選んでください)
1・自分のやる気をアピールするためにプレゼンを行う。
↓↓↓
(次のページに進んでください)
2・渋谷の街に出て、助けを求める。(BAD END)
https://kakuyomu.jp/works/16817330658204760533/episodes/16817330658205454175
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