第12話 命あっての物種

 宣託市内某所。次郎丸はオフィスの中にいた。目の前に、鎌桐が席に座っていた。

「よく見破りましたね。」

「あなたに取り憑いた霊の力は幻覚です。それを受け入れる限り幻覚は続きます。分かったふりをして受け入れなければ幻覚は止まるのです。」

「お見事です。しかし、あなたが見破ったとしても、他の人々が幻覚を見ているのは変わらないですよ?」

「私はどうすればいいでしょうか?」

「ふはは!私があなたの事を決めるのですか?」

「では、聞き方を変えましょう。あなたはどうしたいのですか?」

鎌桐は狼狽えた。

「本当にあなたは侵略をしたいのですか?単に自分の失態を無かったことにしたいのではないですか?」

「そうではない!断じて、そうでは…」

「お言葉ですが、その狼狽え方はそうだとしか見えません。」

「部下の3人が悪いんだ。私が少し女性社員に触れたのを見たことで良い気になって、写真とともに社長に報告した。それで私はセクハラで退職する羽目になった。私のような大きな者が見守らずしてあの部下に上手く出来るとは思えん。」

「部下の3人は何も悪くありません。それに、ほとんどの場合、あなたが言う小さい者で成り立っています。彼らは助け合い、上手くやっていくでしょう。」

鎌桐は席から落ち、膝をついた。その後、鎌桐は自首して、鮫瓦と影里が塩をまき、幻覚は解かれた。〈心霊現象対策部〉には協力者が集まっていた。」

「君たちには改めて感謝を申し上げたいと思う。ありがとうございました。」

藤宮と鮫瓦、影里が次郎丸と岡島流人、畑神に頭を下げた。

「頭を上げてください。僕は何もしてませんし、会社の関係者が犯人でした。」

「犯人と君は関係ない。君の霊の力は必要不可欠だった。」

「ルートですね。」

「君も他の霊も必要不可欠だった。」

「確かにツワモノが部長と話している間、幻覚から逃げるのにヒトヨナキとヒトナミダが活躍してくれました。」

(ソレ程デモナイヨ。)(照レルナア。)

「オカルト君の証言も、ツー君の霊感も、犯人を捕まえることに必要不可欠だった。」

「何と言っても心霊探偵の推理は必要不可欠でした。本当に協力に感謝したいと思う。どうもありがとう。」

「礼には及びません。私は出来ることをしたまでです。」

「誰一人欠けては成し遂げられなかったわけだ。」

「三人寄れば文殊の知恵、ですね。」

「鮫瓦さん、良いこと言いますね。」

「その通りだ。三人以上だが。」

その時、テレビでニュースが流れた。

「世界を巻き込んだ心霊現象ですが、その最中、宣託市内に突如巨大人型生命体が出現しました。」

「大きくて驚きました!」

「黒い球体から守ろうとしてくれてるようでした。」

「あれは、心霊現象か、それとも現実か、分かりません。現実とすればまだまだ分からないことだらけですね〜。」

「さまざまな意見がありますが、あまり悪い印象ではなかったようです。かつて百年程前に目撃者がいた巨人と関連があるとみられています。専門家は巨人を地球の守り神”ガーディアン”と名づけました。」

ニュースを見て岡島流人が言った。

「あれも霊かな?もしかしてあの時話した人が来てたのかも。」

「守り神、良い響き。」

「影里、見てみろ。あの巨人と上司の姿、似てないか?」

「本当ですね、鮫瓦さん。まさか、上司が巨人なんですか!?」

「そんなわけないだろ!」

藤宮は胸を撫で下ろした。

「何より皆、無事で良かった。命あっての物種、だからな。今日は疲れたはずだ。ゆっくり休んでまた頼むぞ。」

その後、心霊現象は減少し、弱小化した。岡島流人は部長に昇進した。

「滑梶さん、成績が落ちてますね。頑張りましょう。僕も頑張ります。」

肩を落として自席に戻った滑梶に蛙山と蛇川が声をかけた。

「また怒られた。」

「あいつ、偉くなったな〜」

「前はあいつが怒られてたのを見て小言を言ったのが恥ずかしいぜ。良い成績を出してやる!」

「いいやる気だね〜」

「トイレに行く日課は変わってないんだな。」

トイレで岡島流人は又三郎と会った。

「三郎さん、奇遇ですね。」

「うん。舐めてる?」

岡島流人はポケットから飴を取り出した。岡島流人と又三郎はグッドポーズをした。岡島流人の中、ルート、ヒトヨナキ、ヒトナミダがグッドポーズをした。畑神は通学中、未開と会った。

「おはよう。」

「おはよう…あの、えっと、この間のはどういう?」

「そういうこと。」

未開は頬を赤らめた。鮫瓦と影里は犯人を追っていた。

「影里!そっち行ったぞ!」

「はい!」

犯人はバナナを持った影里に突進した。

「逃すか!とりゃあ!」

影里の背負い投げで犯人は捕まった。

「よくやった。」

「…鮫瓦さん、反動出ました。」

「仕方ない奴だ。手を貸せ。」

「ありがとうございます。」

藤宮はブラインターを下げ、呟いた。

「今日も平和だ。君も出番が無くて可哀想だな。アグル。」

(平和ガ一番ダ。地球ノ平和ヲ守ル事ガ我ラノ使命ダカラ。)

「私たちは頼もしい。君たちがいてくれるから。」

又次郎丸は事務所の席に座り、キセルから煙を吐いた。そこに依頼者が入ってきた。

「どんな依頼でしょうか?心霊現象でも何でもお受けします。」





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心霊探偵の事件簿 ソードメニー @sordmany

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