第2章 夜風洸夜(よかぜこうや)

 ある日の帰り道。音もなく私の前に現れた。すらっとしたスタイルに茶髪の少し長めな髪黒いロングコートに黒のハット帽に黒い手袋。あなたはマフィアですか!?と内心穏やかでない中素通りしようとしたその時彼は私に話しかけた。

「お前時ノ瀬千登勢だな?」

関わると面倒だと思い私は適当に答えた。

「さぁ誰その人私は知らない。」

「しらばっくれてもいいけどさぁ。後悔するのはお前だぞ?母親の死の真相。知りたくないならな。」

「!?」

彼は何を言っているんだ?母の死の真相?何それ。だって私の母さんは

「だって私の母さんは交通事故で死んだのにか?なんで分かるんだって顔してるな。まぁ無理もない。奴らはお前を狙ってるんだからな。利用されたくなければ俺と来い。絶対に守ってやるから。」

私は混乱と動揺で言葉すら出なかった。利用?奴ら?何それ?え?

「あーもうごちゃごちゃ考えんな。とりあえず来い!」

「来いって言われても!私あなたの名前すら知らない!」

「夜風洸夜!」

「え?」

 夜風洸夜?昔に聞いたことがあった。どこで聞いたか思い出せないけど、母さんが言って様な名前。なんで知ってるんだろう?そんなことを考えながら私は彼に引きずられていた。

「時ノ瀬お前自分の力について知っているか?」

「力って?何?知らない!どうゆうことなの?あなたは何者なの?」

「やっぱりか。」

「やっぱりって?」

「お前は自分の力を知らない。母親が何故死んだのかもだ。その理由は母親がそれを隠したからだ。そしてお前の力は18歳で解放される。だからその前に奴らはお前を手に入れようとした。」

「それは誰?」

「クリムゾンメテオ。自らの利益しか目に入らない。史上最悪な連中だ。お前の母親はあいつらに殺されたんだ。そして今はお前を攫うことで頭がいっぱいだ。だから俺がお前を守りに来たんだ。」

「良く分からないけど。あなたは何者なの?なぜ私を守るの?どうして?」

「それは、生まれつき俺に与えられた命令だからだ。」

「命令?」

「そうだ。命令だ。俺の一族にはある言い伝えがある。100年に一度全ての時を支配する少女が生まれる。その少女を守れという言い伝えだ。」

「私が時を支配する?」

何を言ってるのか全く分からなかった。私は時を操れる人間でそれを守るのが彼の役目?疑問で頭の中がなかなかまとまらない。

「まぁ知らなくても無理はないって。さっきも言ったけどお前には封印の異能が施されている。18歳までは絶対にその異能が発動しない様にな。お前の母親は封印の異能があったんだよ。だから消された。お前を囮にな。残酷な話で悪いと思ってる。俺がもっと早くお前らを見つけてたらと思うと今でも悪いと思ってる。申し訳ない。だからお前のことは守らせてくれ。頼むこの通りだ。」

そんなに言われても母さんは帰ってこないのに、謝られたって帰ってこないのに、この2年間自分を呪い続けた。結局私のせいなんだ。そう思うだけでゾッとした。彼のせいじゃないのもわかる。けど、ここまで言ってくれる人を無碍にはしちゃいけないと直感で思った。だから

「あなたは何も悪くない。悪いのは全て私。」

「いや!、、、」

「いいから!聞いて!」

彼は言いかけた言葉を止めて黙った。

「あなたが誰だろうと、私が何者だろうとどうでもいい。一つ確かなのは私のせいで母さんが死んだってことだけ。私を守りたいなら勝手にすれば良いんじゃない?それが命令。なんでしょ?」

「お前な!、、、」

彼は言いかけて黙った。何でだろうと思ったら私の目から溢れんばかりに涙が溢れていたからだろう。視界も悪い。彼の顔も見えない。彼は私の肩を抱きしめ私は彼の胸に顔をうずめた。私は壊れた蛇口の様な涙を止めることが出来なかった。

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時の瞬き 深風 彗 @keimikaze0705

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