第22話 sideアラド②

 アラドがこの街に滞在するときの屋敷。その一室に呼ばれたミリアは、学園制服のまま立っていた。


「セイシロが使うスキルの謎、少しは手に入れたか?」

「はい、アラドさま」

「聞かせてみろ」


 足を組み椅子に座るアラドは、ひじ掛けに頬づえを付きながら横柄に言う。

 彼はこの屋敷の主であり支配者だった。薄暗い闇の中で、ミリアは静かに語り始めた。


「まず、彼はアラドさまが持つスカウターのように、なんらかの形で相手の強さを知るスキルを有しています」

「ほう」

「このため、初見から私の素性がバレてしまい、闇討ちの類は困難になりました」


 ミリアの強さを最初から看破していたセイシロは、彼女を警戒することから全てを始めた。そのため闇討ちは元より、騙してペースを握ることも難しい状況だったとミリアは報告する。


「私の正体を見破ったセイシロは、交換条件を持ちかけてきました。私が無為にリーリル嬢を巻き込まない、ということを条件に、彼も私の正体を周囲にバラしたりはしない、と」

「おまえはそれを飲んだのか?」

「はい。私の第一目的は彼のスキルの秘密を探ることでしたので」

「それで今、奴らと仲良しこよしにやっている、というわけか」


 苦々しげな顔をしたアラドが、吐き捨てるように言った。


「けして、仲良しなどということは――-」

「嘘を言うな!」


 立ち上がったアラドが、ミリアの腹を蹴りつけた。ミリアが倒れる。


「報告は他からも受けているのだ! おまえ、セイシロと一緒にアンドーブと戦って、いい気になっていたらしいな!」

「それは、セイシロのスキルを調べるために――」

「言い訳はいらん!」


 倒れたミリアの太ももを、アラドは思いっきり踏みつける。


「いいか!? いま別館に居るおまえの弟、病気のアレを生かすも殺すも、俺次第なんだ! アレは霊山の水から作った秘薬を毎日飲まなければ、すぐに衰弱して死ぬ! 俺が用意してやってるからおまえの弟は生きていられるんだぞ!」

「忘れてなどいません。弟が今も生きているのは、全てアラドさまのお陰です」

「そうだ、俺のお陰だ。おまえはもっと、俺に尽くさねばならない!」


 踏みつけた太ももから、足の指先をスカートの中に入れていく。

 足が、スカートの中でもぞもぞと動いた。

 ミリアは無表情で、その様子を眺めている。


「わかって……おります」

「わかっているというなら、喘いでみせろ。俺をないがしろにするような態度は、許さん」


 ミリアは、時間を掛けて、――喘いでみせた。

 吐息を熱くして、言われた通りに。


「そうだ、それでいい。おまえは俺のものなんだ、セイシロに良い顔をするなどと、許せん」


 くくく、と笑うアラド。

 なにかを思いついたらしく、ポンと手を叩く。


「そうだミリア、おまえ、リーリルを狙え」

「はぁ……はぁ、え……っ?」


 息を荒くさせながら、ミリアが聞き返す。

 アラドはこれ以上ない満足そうな顔で、笑った。


「セイシロの奴に教えてやれ、奴との約束など守るに値しないものだと。吠え面をかかせてやるんだ、そうだそれがいい。おまえに騙されたとなれば、奴もきっと後悔する、甘い見通しをした自分にな!」


 手を合わせて自讃する。その顔は光輝に満ちていた。


「ここにリーリルを連れてこい! そうだそれが手っ取り早い、拉致したところで友達を誘っただけと言えば、いくらでも対外への言い訳はつく!」

「リーリルを……」

「なんだ? 不服かミリア?」


 アラドの笑いの種類が変わる。その笑いは嫌らしく、邪悪なものだった。


「リーリルをここに連れてくるんだ! 忘れるんじゃないぞ、弟の命はおまえの行動次第だということを!」



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ここまで読んで頂いてる方には申し訳ありませんが、今回ここでブツ切りエンドです。力及ばず申し訳ありません。

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デバッガーの悪役転生〜俺だけ知ってるバグチート【アイテム入れ替え】でゲーム序盤から最強装備で無双します〜 ちくでん @chickden

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