47cmの命
秋来一年
第1話
「おめでとうございます。元気な女の子です」
この世に生を受けたことを全宇宙に証明するような、力強い泣き声。
赤ちゃんってほんとにおぎゃあおぎゃあって泣くんだな、なんて考えていると、「ほら、お父さんも」と助産師さんに促され、その小さな身体を妻から受け取る。
赤くて、小さくて、くちゃくちゃで。
産まれたばかりの47cmの命は、私の胸の中で元気に泣いていた。
◇
一ヶ月後。
「これが、うちの娘ですか……」
一ヶ月健診を終え、娘を抱いた私は思わず呟く。
今日ここに来た時は47cmだった娘。それが、ひとまわり大きくなっているのだ。腕に感じる重みも、ずっしりと増している。
「まぁ、子どもは成長が早いですから。特に女の子は」
隣で妻が穏やかに微笑む。
と、私たちの会話が聞こえたのか、職員のお姉さんが近づいてきて、言った。
「身体は一ヶ月の乳児モデルに切り替わっていますが、CPUもメモリも、確かに娘さんのものですよ」
「きっと、あっという間に大きくなってしまうんでしょうね」
お姉さんに言葉を返しながら、私は想像する。
この子がランドセルを背負う姿。
セーラー服に身を包む姿。
高校の制服はブレザーだろうか。
そして、あっという間に大人になって、誰かと結ばれ、私たちの元を離れていってしまうのだろう。
この子の相手は人間だろうか。そしたら、私たち夫婦と同じ、人間の夫とロボットの妻の夫婦になるな。それとも、同じ種族であるロボットと結ばれるのだろうか。
今は私の腕に大人しく抱かれているこの子も、巣立つ日がくるのかと思うと、まだまだそんな日は先だというのに鼻の奥がツンとなる。
「もう、気が早すぎですよ」
呆れたように、妻が笑った。
「ああ、そうだな」
二ヶ月後、三ヶ月検診の時にはこの身体ともお別れだ。今しかないこの時を抱きしめるように、娘をぎゅうと包み込む。
とくんとくん、という擬似拍動に混じって、モーターの音が微かに聞こえた。
47cmの命 秋来一年 @akiraikazutoshi
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