47cmの命

秋来一年

第1話

「おめでとうございます。元気な女の子です」


この世に生を受けたことを全宇宙に証明するような、力強い泣き声。

赤ちゃんってほんとにおぎゃあおぎゃあって泣くんだな、なんて考えていると、「ほら、お父さんも」と助産師さんに促され、その小さな身体を妻から受け取る。

赤くて、小さくて、くちゃくちゃで。

産まれたばかりの47cmの命は、私の胸の中で元気に泣いていた。



一ヶ月後。

「これが、うちの娘ですか……」

一ヶ月健診を終え、娘を抱いた私は思わず呟く。

今日ここに来た時は47cmだった娘。それが、ひとまわり大きくなっているのだ。腕に感じる重みも、ずっしりと増している。

「まぁ、子どもは成長が早いですから。特に女の子は」

隣で妻が穏やかに微笑む。

 と、私たちの会話が聞こえたのか、職員のお姉さんが近づいてきて、言った。

「身体は一ヶ月の乳児モデルに切り替わっていますが、CPUもメモリも、確かに娘さんのものですよ」

「きっと、あっという間に大きくなってしまうんでしょうね」

お姉さんに言葉を返しながら、私は想像する。

この子がランドセルを背負う姿。

セーラー服に身を包む姿。

高校の制服はブレザーだろうか。

そして、あっという間に大人になって、誰かと結ばれ、私たちの元を離れていってしまうのだろう。

この子の相手は人間だろうか。そしたら、私たち夫婦と同じ、人間の夫とロボットの妻の夫婦になるな。それとも、同じ種族であるロボットと結ばれるのだろうか。

今は私の腕に大人しく抱かれているこの子も、巣立つ日がくるのかと思うと、まだまだそんな日は先だというのに鼻の奥がツンとなる。

「もう、気が早すぎですよ」

呆れたように、妻が笑った。

「ああ、そうだな」

二ヶ月後、三ヶ月検診の時にはこの身体ともお別れだ。今しかないこの時を抱きしめるように、娘をぎゅうと包み込む。

とくんとくん、という擬似拍動に混じって、モーターの音が微かに聞こえた。

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47cmの命 秋来一年 @akiraikazutoshi

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