孤独に戻った場合
清水らくは
孤独に戻った場合
告白が白い吐息であるように日々が鼓動であればよかった
別れたらどういう呼び名がいいですか二人は初めて知り合いになる
当直に向かう背中を見送ってあなたの救う一人になれない
文明が一つ終わりを迎えても気付けぬぐらい夜に溶け込む
ガジュマルの歩き出しそうな根よ 独りなら歩き出すだろうよ
カマキリがビルを見上げる草むらでたましいだけの時を過ごした
トンボかわいいねトンボ 冬になると空白に目を回した
履歴書に書かないことを積み重ね生きてしまった地球学院
永遠を信じたわけではなかったが永遠みたいに感じたかった
髪留めがぶっきらぼうに落ちているぶっきらぼうのふりして拾う
二人前で売っているパスタソース僕と僕とが食べる絶品
思い出が心に居候をして明るい世界と錯覚させる
ありがとう確かにあった幸せはその追憶で幸せになる
美しい青い花が散った後世界はなんで泣かないのだろう
いつまでも心で編纂し続けた人工知能が恋する事典
洗剤が正しく減った午前九時白いタオルで初夏を奏でる
葉桜の合唱みたいな情熱に負けてしまった それでよかった
水滴が一つ一つ落ちていく瞬きごとに異なる顔で
星座から零れ落ちた星たちと遠足に行くはずだったが雨
孤独より深い孤独があるらしいそれは孤独に戻った場合
孤独に戻った場合 清水らくは @shimizurakuha
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