episode.5「aguressyon or war」

ーーああ、身体が燃えるようだ。

火にくべた肉は燃えることがあるのだろうか。

蝋燭化現象とかいう言葉もあったな。

きっとよく燃えるのだろう。

しかし魂はどうだ?

マグネシウムのように煌びやかなエネルギーを生み出すのか、有機物なのかどうかすら怪しいな。


よく情熱は燃え滾る。

血は煮え、勇気や智慧は振り絞るものだ。

そうして人という動物は体内の薪を燃やし、魂を燃やすことでその熱をエネルギーとして動く。


身体のほてりは智慧と勇気を振り絞り、情熱を燃やし、血を煮ることの証拠だ。


目の奥に啓蒙を宿し、我々は脳の奥に宇宙を見る。



……ろ…。…い…おき……

「起きろ!」


鋭い声は体の弾機を弾く引鉄となった。

抱いていた銃のグリップを手探りで探し当てしっかり握り、四肢に力を含め身体を起こした。

片膝と足裏をしっかり地面に着けいつでも走り出せるよう身体を前屈させる。


「どうした?私は何時間寝てた?」


だいたい10分だと目を丸くしながら起こした男、スティーブは答えた。


「しかし俺が近づいても起きないとは、疲れてたんだな…っと、今はそれどころじゃない。」


「…そうみたいだね。少し臭う…ハーブ?」


よく見ればスティーブは防弾チョッキにライフルと武装をしているし、深い闇を照らすライトがあちらこちらで炊かれている。

機関銃2問がサーチライト替わりに先を照らしていた。

分厚い鉄柵の裏には土嚢が積んである。

周りには数十人武装した人が何かに備えて忙しく働いていた。


「そろそろ来るぞ。」


何が?と聞く前に、スティーブは苦いものを噛み締めたような顔で答えた。


「罹患者だよ。」



罹患者、昼夜を問わず人を襲うサイコカルトの総称だそうだ。

やばいハーブをキメた全身刺青で死こそ救済だと信じて止まない悪魔教だとか、神は我らをお救いになられるためにどうたら…とか。

知らなかったか?神は死んだのだ。


奴らは襲う前に近くで大量のハーブを燃やす。甘ったるく、スカンクを腐った牛乳で煮込んでドブ川に捨てたようなそんな匂いがすると、スティーブは言っていた。


そんな話を聞きながら私はM4のマガジンを数えしっかりポーチに収めた。

チャンバーに弾を込め、セーフティをかけた。

サイドアームのGLOCKの弾のホローポイントは活躍するだろうか。

GLOCK17は安い、軽い、使い易いで重宝するが、こんなことなら45口径を持ってくればよかった。


外から雄叫びが聞こえる。

酷く嗄れた獣の声だ。

さぁ狩りの時間だ。

慈悲を持つな、悲哀するな、容赦なく轢き殺すべきだ。



何十人もの束になった全裸で刺青を入れた罹患者達は、唾液を撒き散らしながら走ってくる。

斧や鉈、ナイフにものによってはサブマシンガンをぶっぱなしながら走ってくるようなやつもいたが、すぐに弾が切れた。


十分に引き付けた上で、双首の龍は口を開いた。

毎分725発のブレスは罹患者を文字通り穴だらけのスポンジに変えた。

本来ミニミは軽機関銃で歩兵に持たせる機動性のあるものだ。

ブローニングM2のような圧倒的暴力性はない。

しかしながらこの場においては圧倒的であった。


撃ち漏らした2,3人を周りの人間が撃っていく。

戦える女や子供(と言っても15~6は超えているだろう)はこの防衛戦に参加して銃の使い方を学んでいるようだ。


なるほど、合理的である。

もう道徳など、まかり通らない綺麗事だ。

そう思いながら私はグリップをきつく握り直した。


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