第39話 ミモザノ香リ
私は大学生になり、髪をバッサリ切った。
ショートボブ。
新規一点したかった私。
だが、高校生の時と比べ、少し成長したと思っていた自分だったが、相変わらず平凡な毎日を送っていた。
私の行く学校には、男子と女子の割合もほぼ同じで、同じ学科の人同士で付き合っている人が多い中、私は彼氏を作れずにいた。
作れずにいたというより、作ろうともしなかったのか。
それともこの人と思える人がいなかったのか。
それに、特に意識をしていたわけではなかったが、やはり彼との出来事がかなりのトラウマになっているのだろう。
男子に声を掛けられてもまともに返事もできず、前の私に後戻りしていた。
結局、運命の人ではなかった彼と出会った事により、何か私にプラスになったことがあるのかを考える。
もちろん、美華ともさらに仲良くなり、クラスの友達とも最終的には仲良くなった。
だが恋愛に関しては...。
どちらかと言えば大人の人の顔色を伺うことに関しては敏感でいたが、彼との事があってから、より疑いの目を持つようになる私。
あの甘くて優しい香り。
もう香りなんて信じない。
そう思っていた。
そんな中、相変わらず美華からはラインと電話が毎日来る。
「じゃーん!これ私の部屋~!ザ女子の部屋って感じでしょ?」
そおやって写真つきのラインが送られてきた。
ピンクのカーテンに、おしゃれなテーブル。そして女の子らしいソファー。
実家にいた時の美華の部屋は畳だったから、こうゆうのに憧れていたのかもしれない。
唯愛「めっちゃいいじゃん!可愛い!早く遊びにいきたいなぁ~!」
美華「また予定合わせて決めようね~!てかさぁ~!私趣味始めたんだ~!スイーツづくり!結構楽しいんだよ~!唯愛料理上手じゃん?だからそれは唯愛に任せて、私はスイーツ担当ってことで始めたんだ!」
唯愛「すごいじゃん!今度食べさせてよぉ!てか、一緒に私も作りたいっ!」
美華「うん。いいよっ!ちなみに唯愛は大学生になってから趣味とか始めた?」
私も彼女と同じ。
大学に行き初めてやり始めた事がある。
そう。それはランニング。
美華の実家の近くの公園まで走っていき、そして”ナデシコ”の花に話しかけて帰る。
これを毎日続けていた。
美華「えー!すごいじゃん唯愛!今度帰った時一緒にランニングしよっ!」
唯愛「いいよっ!美華に負けないようにしっかり体力つけとくね!」
こんなラインを毎日していた。
私は彼女と繋がっていればそれだけで十分と思っていた。
また前のような大人しい性格に戻ってしまった私だが、わかってくれる人がいるだけで...それだけでいいと思っていた。
そして次の日の朝。
私はいつもの時間に起き、公園までランニングをする。
朝のランニングは気持ちいい。早起きは三文の徳とはまさにこの事だ。
私の好きな音楽をかけ、公園まで走り出した。
「今日は"ナデシコ"の花元気かな」
いつもの日課である”私の心の友”に会いに行く。
「おはよう!今日も一日頑張ろうね」
そお言って声をかけたが、いつもより元気がない。
私と同じ未熟なナデシコは、他の花に比べ、少しおどおどしているように見えた。
今の私と同じ。
だがその隣には、前まで育っていなかった花が少し大きくなり、倒れそうな”私の心の友”を支えているように見えた。
「もう私の出番は終わりだね」
私は微笑みながらそお声を掛け、ベンチのところまで行く。
するとベンチの近くで、1枚のタオルが落ちていることに気づいた。
手に取ると、そのタオルから甘く癒やされる香りがしてきた。
どこか懐かしく、吸い込まれそうな匂い。
そのタオルの持ち主を探そうとすると、いつも私が座るベンチに一人の男性がスマホを触りながら座っていた。
その男性に近づくと、拾ったタオルと同じ香りがしてくる。
未熟な私。
彼の香りに吸い込まれ、私の新しい恋が始まる。
私の運命の人は。
~終~
未ジュクナデシ子 夜影 月雨 @za-bi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます