第420話 初ダンジョンがいろんな意味で難易度MAXな隣国

 「海洋ダンジョン、ですか?」


 そらの説明に戸惑うパク外相。


 いや、元々よく喋る方ではないそらだから、訥々とした説明に理解するまで結構かかった。


 え?

 日本、またダンジョン出来たの?

 いいなぁ。


 ただ、所有権で争える位置ではない。

 完全に日本の領海、水深100メートル付近にあるダンジョンは、しかもスタンピードしているらしい。


 「誰も知らなかったダンジョンだから、イギリスがスタンピードを起こした頃、多分溢れていると思う。

 誰も探索していないわけだし。」


 なるほど、と納得する。


 海中にあるダンジョンから水棲モンスターが溢れ、環境に順応した上繁殖し始めている。


 「そちらは、報告は上がっていないですか?」


 訊かれたが、わからない。


 漁業者達から、おかしな魚の報告は無いように思う。


 「一応食べられる……

 と言うか、かなり美味しいので。

 わかる範囲の魔魚の種類と説明は、メールで送りました。」


 今、パク外相の手元に来ている。


 角があったり、こぼれるような大きな目を持っていたり、見た目からもおかしな魚だ。


 おすすめの食べ方まで書いてある⁉️


 彼女達、自衛隊外局、試したらしい。


 『勇者だ……』

 と、呆れた外相だが、『鑑定』持ちがいたことを思い出す。


 なら食べることが出来るか……


 これ以上スタンピードが続けば生態系に影響が出る。


 会談の目的は、

 『未だ方法はわからないが。』

 『日本はスタンピードを終息させることを目指す。』

 『だから国境近くに、海上保安庁なり海上自衛隊の艦船が集結する可能性があるが。』

 『両国の関係を乱す意図は無いので理解して欲しい。』

 と伝えるためだった。


 確かにこれは仕方がないことと納得する。


 恐らく漁業者は海上でその光景が見えるだろうし、条件次第では沿岸から見えるかも知れない。


 国民に周知徹底しないと、おかしなトラブルを生むかもしれない。


 今日本とは、ダンジョン産資源のこともあり、もめるわけにはいかない。


 「理解した。国内に周知しようと思う。」

 「ありがとうございます。」


 話はまとまったと思ったら、

 「あと1つお伝えすることがあります。」

 と、そら。


 そらが見つけた。


 だから、この会談の担当者にされた訳だが、

 「釜山の沖合いにダンジョンがあります。」

 と告げた。


 あの日、ヘリから『気配感知』で確認出来た事実……


 それは、韓国にとって初の固有のダンジョンが、海底100メートル付近にあると言うこと。


 いわゆる『海溝』ではなく、『大陸棚』にあるのなら、例えば石油の採掘などで前例もある。

 プラントを作り人を送り込めるはずなのだ。


 沸き立つような感情に顔を紅潮させるパク外相に、

 「ただ、当然そこもスタンピードを起こしています。」

 と、冷静に伝える。


 「そのダンジョンは一定の間隔でモンスターを吐き出し、水棲モンスターではないらしく、環境が過酷過ぎて即死する、を繰り返しています。

 場所のデータは提供しますし、どうするかは韓国次第です。

 もし、どうにもならなければ相談して下さい。

 力になれると思います。」


 


 

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