第419話 見つけにくいけれど見つけてしまった件

 同じ頃、韓国済州島でも。


 水揚げされる魚の中に、奇妙な魚が……

 魔魚が混じり始める。


 彼らはまだ海洋ダンジョンを知らないから、

 「なんだ、こいつ?」

 「角だ。」

 「気味が悪い……」

 と、悩むばかりだ。


 漁師と言うのはどの国でも同じなのか?


 政府や学者に報告する選択肢は無い。


 ただただ、仕事の邪魔になるから。


 彼らは近海の魚を狙っていた関係で、魔魚がチラホラ混じる程度。

 『奇形』なら酷過ぎて『食べる』訳にはいかないが、

 『取り敢えず無視しよう』と、目で合図し合う。


 しかし、犬嫌いな人に犬が敢えてじゃれつくように、正装している時に限って飼い猫がすり寄ってくるように、

 「なんだ、こいつ?見たことが無いな。」

 と、年配の漁師が持ち上げたのは飛行ウオ。


 いきなり5メートルくらいまで広がる巨大な羽を広げ……


 「ぎゃっ‼️」


 潰れたような叫び声で、老人は卒倒した。


 「「「あーっ‼️」」」

 「キムのじいさん‼️」


 しばらくして意識を取り戻したが……

 

 いや、ショック死しなくて本当に良かった。


 後ろから覗き込んでいた子供がメノミに睨まれ、ギャン泣きすると言うオマケはあったが……


 取り敢えず、韓国はまだ知らないままなのだ。


     ☆     ☆     ☆


 「午後からの予定は?」

 「15時から定例の会議が入っています。その前に、13時の約束で日本とのweb会談が。」

 「そうか。」


 韓国のパク外務大臣は、机上の資料を手慰みにしつつ考える。


 日韓の関係はその時々、近付いたり離れたりを繰り返しているが、今は『近付いている』時期だ。


 歴史に起因した微妙な感情はその時々の政権により左右されるが、朝鮮半島にはダンジョンがない。

 実利的な意味もあり、日本とは仲良くしないといけない、今はそう言うターンだった。


 ただ、今回の会談は外務省経由で申し込まれたが。


 会談相手は『自衛隊外局』、日本のダンジョン部隊だ。


 何を言われるのだろう?と、漠然とした不安が襲う。

 

 ダンジョンがない国・韓国にとって、政治問題、領土問題と共に、ダンジョン問題は重要課題だ。


 だいぶ普及してきた魔石燃料の自動車も、肝心の魔石が定期的に入らないと水泡に帰す。

 魔石燃料、費用と航続距離から考えるとガソリンよりもお得な上、二酸化炭素を生まないので環境にもいい。

 

 自国で産出されない絶対的に必要なものは、それだけ気を使って対応せねばならない、重要課題なのだ。


 13時になった。

 パソコンに映し出されたのは、自衛隊の制服姿の女性だった。

 一応国際会議だからか、儀礼用の制服に勲章を多数下げている。


 『戦乙女、桶谷そらか。』

 驚く外相。


 局長の桶谷閣下でも無く、副局長の野中博士でも無い。

 なぜ彼女が交渉の窓口に?


 「韓国の外務大臣ですか?」


 ……

 いや、ベタベタな日本語だよ。


 一応通訳もいるし大丈夫なのだが、画面の向こうも、

 『そら‼これ付けろ、これ‼』

 『あ、忘れてた。』

 と騒ぎになり、そらがしっかりペンダントを装着、

 「韓国の外務大臣のパクさんですね。

 初めまして、桶谷そらです。」

 と、急にここから韓国語。


 『相互理解のペンダント』かとわかり、ぶっちゃけ、『あの魔道具超欲しい』と思う、パク外相だったのだ(笑)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る