第417話 きっかけは魔魚(←ダンジョン学部らしい)

 慶応大学ダンジョン学部研究科3年は、男子2名と女子2名だ。


 女子は、

 『社会を便利にしたい‼️』

 『安全にしたい‼️』

 そのためなら、ダンジョン技術も魔法も転用しまくる、若干マッド気質のナナタマコンビで、男子1号は、

 『モンスター大好き‼️』な、モンスター博士なモンちゃん。

 いや、まだ大学3年だし、厳密には学士ですらないのだけれど、モンスター学の第一人者だ。


 そして、あと1人がムー君。

 いつも、

 「むー」

 「むむむ……」

 と、とにかく『ムームー』悩んでいるので、ムー君(またはムッ君)だ。


 すでに世間的にも有名になりつつある、モンちゃん、環希、七菜に比べ、ムー君は何者でもない。


 いや、能力や情熱が劣るわけではなく、

 『何をすべきか?』

 『何がしたいのか?』

 まだまだ、具体的に見えないのだ。


 邦子が開発した『ぽ~しょん』(従来より効果の高い健康ドリンク)や、『回復錠』(5000円くらいで手に入る『回復薬』の劣化版)にも興味があるし、ダンジョンドロップの魔道具にも興味がある。

 地下なのに日が射したり、砂漠だったり吹雪だったり、ダンジョン空間にも興味がある。

 一体どんな構造なのか?


 ある意味1番若者らしく、迷っているムー君と、

 「今いいところなのに。」

 と、代官山モンスター図鑑の執筆が佳境だったらしい、モンちゃんが無精無精近付いてきた。


 で、テンション一変。


 「うわあああっ‼️何これ⁉️スゴい‼️」


 環希が運んできた発泡スチロールには、一角ウオと飛行ウオが入っていた。


 「ダンジョンが海の中にあって、多分イギリスの時と同じくらいにスタンピードしてるらしいよ。」

 「えっ⁉️じゃあ、モンスター⁉️」

 「モンスターが長く外に居すぎて、環境に順応して普通の魚になったんだって。美味しいらしいよ。」

 「魔魚だよ、モンちゃん。」

 「うおおおっ‼️」


 モンちゃん、大興奮。


 護衛中で同じ部屋につめていた小春が、思わず覗きに来たくらい。


 ちなみに『産休明け』と言うより、『産休中のバイト』のような感じの小春です。


 なにせ、俊太も実家も都合がつかない時限定だが、息子の色彩を連れて来てるし。


 「あ、シキちゃんだぁ。」

 「残念、君はまだ食べられないよ。」


 離乳食も始まるかどうかの子に、何言ってんだかな台詞だが、

 「きゃきゃ。」

 構って貰って、色彩君ご機嫌。


 「んじゃ、ムー、捌いてよ。」

 「えっ⁉️ムー君出来るの⁉️」

 「俺、島の出身だから。」

 「スゴーい‼️」


 言われるまま捌きながら、

 『何でこんなことが起きるのか?』

 と思う。


 モンスターが普通の生物になる?

 女子達のスライムもそうだ。

 『屈服』し、人を認めたからダンジョン外に出られるらしいが……

 魔魚達にはどんな変化があったのだろう?


 「調べてみようかな?」


 脳の位置にある魔石を取り出しながら、ムー君が呟いた。


 「「「ん?」」」

 「何でモンスターがダンジョンを出て、どう言う過程で魔魚になるのか?

 今回はスタンピードしてるなら、絶え間なく魚は補充されているはずだし、『過程』がとらえられるんじゃないかな?」

 「「ああ‼️」」

 「確かに‼️」

 「その過程で『屈服』の原理とか、調べられたら面白いな。」


 魔魚に触れたのがきっかけで、ムー君の方向性が決まった。


 ちなみに、『刺身向き』とか『ソテー向き』とか、彼らは全く気にしない。


 冬だし、全部鍋に放り込む。


 「旨い‼️」

 「鍋もいいなぁ。」

 「美味しい‼️」

 「魔魚かなりうまいなぁ。」


 大学生ノリを味わい、書類上大卒、実際は高校中退の小春も少し微笑むのだ。

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