第413話 恐怖‼️一升メシを食う人達

 「まあ、結論から言えば、海の中にダンジョンがあって、スタンピードを起こしてるんだと思うよ。」


 きっぱり言い切る邦子だった。


 ただ今漁協で調理スペースを借りて、一角うなぎを調理中。


 たくさん食べる子が……

 いや、たくさん食べる従魔が……

 いや、自分もたくさん食べるから、うなぎは3匹用意した。

 調理担当そらさんが。


 おかしな魚……

 もう、魔魚で統一しようか。

 魔魚は巨大冷蔵スペースいっぱいにいた。


 完全『食べ放題』である。


 一角うなぎはとにかくでかい。

 イメージ、深海魚のリュウグウノツカイに50センチくらいの角がついている。

 真っ白な魚体で身が厚く、かなり脂がのっていそう。


 「適当に捌くけど、なんかあったら言ってくださいね。」

 「?」

 「なんか?って?」

 「ほら、毒とか。一応元モンスターですし。」


 「あー、それは大丈夫。」

 鑑定持ちが保証した。


 「普通のうなぎみたいに毒は無いし、なんなら刺身でもいけるって。」

 「でも、一番は蒲焼きらしいぞ。角と骨は出汁をとって、お吸い物もいけるって。」

 「青君……」

 「君の『鑑定モノクル』、オススメ料理まででるの?」


 ダンジョンでは、武器や防具がレベルを得て進化することがあるが、気づかぬうちに『青仕様』になっていたらしい、『鑑定モノクル』。

 ま、まあ、便利?


 一角うなぎは太いから、腹開き、背開きは悩まなくていい。

 いわゆる3枚下ろし。


 「って言うか、スライムナイフ(回復機能付き)を包丁にする人初めて見た。」

 「手際が悪いから、時間がかかって食材が痛む。」

 「そこに回復機能を使うなんて……」


 いやいや、やはりこの人もただ者じゃなかったよ。


 とは言え、そこまで不器用でもなく一角うなぎを捌き、半分は蒸してから焼く関東風、残りは関西風にすることにする。

 骨と角は鍋に入れて、絶賛煮出し中。


 「これ、絶対メシがいるだろ?

 俺、出そうか?」


 マジックバッグ(のふりの『倉庫の腕輪』)に手を入れる青を、

 「青君のは爆弾おにぎりで、具が入りまくってるから駄目。

 蓮沼君、頼める?」


 急に振られて慌てた大輝だが、すぐに家に電話を入れる。


 「もしもし、母さん。

 ……うん、うん。今自衛隊の人と一緒にいて。

 ……違うって。何したら自衛隊に捕まるのさ。うん……

 とにかく、俺あとで買って返すからさぁ。米を2升……

 いや、3升炊いて漁協に届けてよ。」


 青と従魔で2升くらい食べてしまうらしい。


 邦子からカンペが出ていた。


 やがて冬の朝が白々と明け、大量の蒲焼きがいい匂いを漂わせる頃、

 「もう‼️なんなのよ、大輝‼️」

 「なんなの、馬鹿兄‼️」

 と、姉が車を出したらしい。

 出勤前(近所の工務店の事務員)の姉の小夜(さよ)と、登校前だから付いてきたらしい、妹(高2)の日向(ひなた)が現れる。


 「は?マジなの?」

 「嘘⁉️

 ダンジョンプリンスと戦乙女と野中博士じゃん⁉️」


 邦子さんだけ、変な二つ名無くていいなぁ。

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