第409話 ダンジョンは陸地にあるとは限らない(五七五)

 「元モンスターですね。」

 「「「元⁉️」」」

  

 紺の言葉に、聞き返したのは桶谷、邦子、そして青。

 そらは目を丸くした。


 下関の船員から、資料画像付きの調査依頼がメールで届いた。

 慣れない文章から若い子なんだとわかったが、添付された画像はなかなかのものだ。


 邦子の目にもダンジョンモンスターに見えるが、画像からでも鑑定出来るチート持ちは、生まれつき『鑑定』のスキルを持つ紺だけだ。


 だからこその呼び出しだが、

 「俺の大事な妹を、暗くなってから呼び出すなんて」と、青が付いてきた。


 相変わらずのシスコンだが、実際はもう、アメリカの『ダンジョン反転』以来、青も妹達を一人前と認めている。


 ただ学校の女子寮暮らしの紺が、門限をオーバーする許可を貰って連れ出してくれた、それが本当のところだった。


 恒例局長室に集まって、問題の画像を見ている。


 「紺ちゃん、『元』って?」


 改めて問う邦子に、紺が鑑定結果を説明した。


 一角ウオ。

 元モンスター(順応済み)。

 脂の乗った白身で、生食も可。

 美味。

 角は象牙と同じ成分で、代用になる。


 「……だそうですよ。」

 「便利だな、こいつ。」

 「食べれるんだ……」

 「いや、でも順応済みって?」


 「モンスターが長い間ダンジョン外に暮らして、そこに順応した普通の生物になることです。唯一の違いは魔石を持つことですかね。」


 つまり、この元モンスターは長い間ダンジョン外にいたことになる。


 モンスターがダンジョンを出るのは、スタンピードを起こした時か、ダンジョン反転が起こった時。


 ここから導き出せる答えは?


 「「「「「海洋ダンジョン(です)か‼」」」」」


 図らずも、全員の声が揃った。


 ダンジョンは、9年近く前に、世界中に現れた。

 日本には100ダンジョン、アメリカには200ダンジョン以上あり、朝鮮半島には無いがアジア各地、ヨーロッパ、オセアニア……

 世界各地の『陸上』に点在するって、そんなわけは……


 「無いじゃない‼️」


 無作為に現れたダンジョンが、必ずや陸上にある約束など無い。


 海中にもいくつかあるはずだから……


 「イギリスのスタンピードは2年前か。」

 「なら、未発見の海洋ダンジョンも、同じ頃溢れてる。」


 ダンジョンは立地に関係しない。


 海中にあるダンジョンでもゴブリンやウルフがいるタイプなら、溢れ出た時点でモンスターは生き残れない。

 けれど、中に水棲モンスターのダンジョンがあるのなら?


 溢れ続け、ついにはモンスターが順応してしまい……


 「特定外来生物じゃん‼️」


 いや、それどころじゃない気がするよ、邦子さんや。


 とにかく現地に飛ぶことになった。


 今日は木曜。

 金曜から4日間は実質休みである青も、強制参加が言い渡される。


 残念ながら紺は学校。


 邦子とそらで現地へ向かい、桶谷は生態系維持のために学会や政府に協力を仰ぐ。


 付いていけなくて……


 桶谷、いじけてた(笑)


 

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