第400話 プリンスと祭りと大統領再来

 「よーしっ‼️」


 珍しい、青が大声を出した。


 どちらかと言えば、

 『竜巻と取っ組み合いした』方が早い、脳筋の青。


 普段とは違う、ミッションとも言うべき仕事を終えて、さすがに緊張の糸が切れる。


 キャンピングカーから白と水まんじゅうが飛び降り、青と共に『勝利の不器用ダンス』を披露中。


 「やってくれたな、大食い小僧‼️」


 街の方から声が掛かる。


 「ありがとうな‼️」

 「また助けられた‼️」

 「今から祭りだ‼️食ってけよぉ‼️」


 「おう‼️肉好きだ、俺‼️」


 本当に素直な、子供みたいな返事だ。


 「酒も出すぞ‼️」

 「はは‼️

 そっちはそこまで好きじゃないから遠慮しとく‼️

 腹一杯食わせてくれよ‼️」

 「おう‼️任せろ‼️

 牛1頭準備しとく‼️」

 「妹達にも生クリームたっぷりのケーキ、いっぱい用意しておくからな‼️」


 いや、フードファイターみたいな扱い、やめれ。

 あと、牛さん合掌(笑)


     ☆     ☆     ☆


 で、始まりました、大騒ぎ。


 街の住民もカウボーイ達も、青達日本人組も食べまくりの飲みまくり。


 今回は七菜さんも飲んでいる。

 ビールは遠慮してウイスキー。

 七菜もハチも、強めの酒が大好きだ。


 あの藤田スケールで最大、F5の竜巻の出現のお陰か?


 周囲の空気が落ち着いた。

 積乱雲を生むような気圧の乱れもなくなって……

 またそれが、『気配感知』を応用してはっきりと理解出来るから、カウボーイ達も肩の力を抜いて楽しんでいる。


 これ以上季節外れの竜巻被害は無さそうだ。


 事態が収束したなら、今度は気になるのは奏多の事。


 今回は飲んでいない肉を食べまくっている青も、そこそこ飲んでいるけどほぼ素面に見える七菜も、やはり飲んではいるけど前回よりセーブ中の未来も、まだ1センチしか飲んでいない環希も、そして説明はしていないけれどそこの女の子同士の勘と言うか、その想いに気が付いている妹ズも注目している。


 「奏多さん、改めてお久し振りです。」

 「うん。

 あれ?ショーン、強くなった?」

 「ええ、頑張っています。『制御の腕輪』をつけて体術も習っているので。」

 「いや、それ以前にレベルも結構上がってない?」


 奏多は今回は飲んでいない。

 ショーンがノンアルコールというか、ぶっちゃけミルクなんか飲んでいるから、付き合ってオレンジジュースだ。


 でも、話しているのは当り障りがない……

 と言うより、これぞカウボーイ!な色気のない話。


 何やってんだよ?


 全員思っていたが、日本ではあんなに勢いがよかった奏多さん、なかなか動けないらしい。


 まあ、朴念仁の青でもわかる。

 万一断られたら、と思えば告白しにくい。


 ってか、怖い。


 紺が冷たくなったらと、想像しただけで凹みそうな青だったが、

 『うーん、でもなぁ?』

 これ、うまくいかないか、かなりの高確率で。


 ショーンの方から尊敬込みの好意を感じる。


 「ミスター。」

 焼いた肉を取りに来たショーンが話しかけてきた。


 「ん?」

 「先輩たちが聞いて来いってうるさくて。誰か本命がいるんですか?」


 ラスベガスの英雄が、女の子ばかり6人(うち2人妹だが)も連れてきたので、興味津々なようだった。


 「いや。教えてる学生だ。」

 「そうなんだ。」

 「ショーンこそ、誰か付き合ってる人いるのか?」


 どさくさに紛れて聞いてみたら、

 「いえ。強くなるのに必死で、恋愛とかしてる場合じゃなかったから。」


 ならいいかと、青は思う。


 明日、研究科の一件でホワイトハウスに呼び出されている。


 ちょっと目立ち過ぎているし、本人達の安全のためにもこの呼び出しには応じるつもりだった青は、改めて大統領に電話する。


 「あー、おっちゃん?

 うん、明日行くから。

 あー、でも頼みがあるんだ。

 うんうん。なあ、おっちゃん。

 晩餐館開いてくれよ。」

 「???」


 青君、それ、焼き肉のタレ。

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