第399話 プリンスと実験最終章(そして伝説へ(笑)

 同じ頃アメリカの各州では、

 「おい‼️」 

 「あそこだ‼️」

 「と、すると……(と地図を広げる)」

 「こことここには避難指示を‼️」

 「おい‼️こっちもだ‼️」

 「これは、街は大丈夫そうだな……」

 「牧場を……

 掠めるな。ロイド、直接行け‼️」

 「わかった‼️」

 

 カウボーイ達による竜巻の感知が、だいぶ組織だって運用され始めていた。


 もちろんショーンが伝えたからだが、独立独歩、個人を大切にする国でスムーズに話が進んだのは、ショーンだったからだ。


 本人のみ自覚は薄いが、彼もまたラスベガスの英雄。

 下手をすれば、ショーンより高位だったカウボーイ達まで話を聞いてくれた。

 そのお陰だ。


 住人達は地下室に……

 この竜巻街道に住み、けれど避難所を持たない住人達もバスタブの中などに避難する。


 いくつかの街が竜巻に襲われたが……

 怪我人は出た。

 しかし、死亡した人はまだいない。


 なんとか上手くいっていると心に余裕が生まれた、しかし‼️


 「おい‼️あれを見ろ‼️」


 『気配感知』している場合ではない。

 いや、『気配感知』をしている脳がビリビリ痺れた気がして、痛みすら感じる。


 彼らが拠点としていた、前日青が助けた街だ。

 結界で壊せなかったことが不満なように、今すでに目視出来る巨大過ぎるスーパーセルから、ろうと雲が伸びている。


 絶対タッチダウンして竜巻になると、『気配感知』が告げている。


 「まずい‼️」

 「あれ、真っ直ぐここに来るぞ‼️」

 「住民は避難を‼️」

 「やれるだけやって、俺らも避難するぞ‼️」


 藤田スケールで、F5か、少なくともF4はある。

 最大級だ。

 風速100キロ近い、暴風が迫り来る。


 それはチープな表現だが、まさに『この世の終わり』だった。


 「こんなのどうすればいいんだ?」

 と、迫り来る竜巻に棒立ちになるショーン。


 ショーンは空間魔法使いだ。

 ギリギリまで引き付けて……

 いや、竜巻に巻き込まれた後でも、ショーン1人なら転移して逃げられる。


 けれど‼️

 他のカウボーイ達は無理だ。

 全員引っ張り出すには情報が足りない。

 街の住民達はよけい無理で……


 この竜巻はでか過ぎる。

 地下室に隠れている人々さえ、無慈悲にその命を散らしそうで……


 「くそう……」

 無力感で歯噛みするショーンの前に、竜巻に負けないブレーキ音と共に、ドリフトで現れた車は、見覚えのあるキャンピングカーだ。


 ……

 ちなみに、今回運転手は藤奏多。

 未来も荒かったが、奏多さん、それ以上(笑)


 「あ……」


 呆気にとられるショーンの前で、フラフラしながら車を降りてきたのは青。

 何故だか、大きな箱のような、……縁起でもないが棺のようなものを片手に、

 「うー、きっつぅ。

 車酔いは克服したはずなのに……」

 と、ぼやいている。


 ちょうど街と竜巻の間だった。


 いの一番に竜巻に飲まれる位置に、彼はいる。


 「えっ⁉️危ないよ‼️ミスター‼️

 早く逃げて‼️」

 「ショーン‼️」

 「⁉️」


 声は、日本の恩師である奏多だった。


 「奏多さん⁉️」

 「乗って‼️」


 促されて、助手席に。

 その頃には青の姿は見えなくなる。

 キャンピングカーがガタガタ揺れる。


 「何を⁉️」


 瞬間、竜巻の『色』が変わった。


 逆巻く風が真っ白になる。

 急激に動きが鈍くなり、激しい稲光。


 そして。


 「あっ……」


 嘘のように竜巻が消えた。


 青空が見え、巨大な氷が降ってくる。


 さすがカウボーイ。

 ショーンの目は、落ちてきた巨大氷の真下にある、恐らくは青がいるらしい、茶色の箱をとらえている。


 潰される‼️と思った。

 しかし、

 「あー、焦った。」

 まるで、暑くて布団でも蹴るような気軽さで、青がその下から無事抜け出してきた。


 ……

 呆気……


 そして街から歓声が響き出す……

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