第358話 プリンス、恋話?に巻き込まれる

 青は講師でもあるのだが、彼らは大学3年生だ。


 3年生と言えば、すでに就活も始まって、皆が未来を見据えながら動き出す時期だったが、ダンジョン学部は少し違う。


 特に探索科は、十中八九探索者になるのだから、特別な就活などしないケースがほとんどだった。


 ただ、探索者は自己責任。

 怪我で再起不能になればそれまでだし、思った程稼げなくて、苦労するのも自己責任だ。


 だから一攫千金を諦め、月給と手厚い年金の安定生活を望む者は、『自衛隊外局』か、ここ数年で出来上がった『警察庁ダンジョン部隊』か『消防庁ダンジョン特科』を受験する。


 これらの試験は4年になってからだから、今はまだ通常営業の探索科だった。


 一方研究科は、また違った意味で就活がいらない。


 基本研究者でありサラリーマン生活になるのだから、公務員系の『自衛隊外局』と『警察庁』と『消防庁』、あとは民間企業の研究施設しか無い。

 

 1番人気は『自衛隊外局』だが、自衛隊を含め公務員系の試験は来年だ。


 大学の研究科に所属した学生は、どこかを必ず受験するだろうし、今は『滑り止め』くらいの感覚か、民間企業から声がかかる、完全な売り手市場だ。


 奏多と未来は当たり前に専業の探索者になるつもりだから、就活はしていない。

 七菜と環希は『自衛隊外局』を受験する予定で、

 『もし残念な結果ならうちに来てね。』

 と、民間数社から声がかけられていた。


 だからまあ、慌てて何かする必要かある人はいないよ。


 「冬休みにアメリカ行きたい。」


 いつもの食事の時間だった。


 「アメリカ?」


 急に言い出した奏多に、あまりに脈絡が無さすぎて不思議顔を見せる未来。

 

 未来は、相変わらずの自分で作る気はない日替わりA定食で、残る3人は弁当。

 4人の足元にはスライムが遊び、クロスケはA定食を、ハルカ、ハチ、ういろうも人と同じ弁当を与えられている。


 変わらない、ダンジョン学部女子ーズな食事風景だった。


 「アメリカって、例の男の子の?」


 夏休みにバイトをしたと知っている。


 「そう‼️ショーンに会いたいの‼️」


 奏多の意外な勢いに、

 『これって、もしかして……』

 『奏多、まさかその子のことを?』

 と、うっすら気付いたのが七菜に未来。


 ういろうと遊んでいる、環希はまるで気付かったが。


 「じゃあ、早めの卒業旅行にする?」

 「でも、そんな時間的な余裕、あるかなぁ?」


 すでに半分近くが終わっている12月。


 パスポートは全員持っていたが、さて、間に合うのか?


 まあ、間に合わなかったから、奏多は青に特攻したのだが(^ー^)


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