第357話 プリンスと従魔で弁当20個

 『分娩室』前の大騒ぎの後、無事俊太・小春夫婦に子供が生まれた。


 非常に安産だったらしい。


 髪の薄い男の子。


 いや、『髪』は新生児なので仕方がないが、意志の強そうな目が俊太に似ている。


 「うわっ、かわいいなぁ。」

 「小さいねぇ。」


 今は妹ズがかぶり付きで愛でているが、 

 『いや、君らも小さかったぞ』と、青は思い出す。


 青とひまわりは6歳差の兄妹だ。


 お腹の大きかった母親が、迎えに行った父親と共に、小さなひまわりを連れて帰ってきた。

 暖かな命そのものを、抱かせてもらった日を覚えている。

 6歳だった青にとって、守らねばならない、大切な存在を手に入れた日だ。


 そこから更に6年後、まだこぎつねだった紺にも出会った。

 小さくて、震えていたフワフワの黄色い塊……


 シスコン爆誕秘話だった。


 そんな2人も大きくなって、なかなかに常識外れな、いい女に成長中。


 思えば遠くに来たもんだ。 


 ちなみに、俊太息子の名前は柳川色彩(やながわしき)だ。


 「男でも女でも、色彩(しき)にしようって話してたのよ。」

 「俺らにとって大恩人である、赤井家へのオマージュだ。」


 ……だってさ(n*´ω`*n)


     ☆     ☆     ☆


 12月も前半が終わった。


 大学は冬休みに入るのも早い。

 今日は今年最後のダンジョン実習だ。


 木曜日、ラッシュを避けての早朝から講師室にいる青は、コンビニを3軒はしごして買ってきた弁当を掻き込んでいる。


 今某コンビニは『北海道フェア』中で、ジャガイモがゴロゴロのって厚切りベーコンもたっぷりのクリームパスタ、旨い。


 青の借りている講師室のレンジ、想定以上の大活躍だ。


 「次は……

 これ、いくか。『十勝牛のサイコロステーキ弁当』。」


 4つ目の弁当を温めようとしていると、

 「クウゥ。」

 「……(プヨプヨ)」

 白が甘えた声を出し、水まんじゅうがポンポン跳ねて視界に入る。


 「ん?お代わりか?

 次どれにする?」


 白は『大盛トンカツ弁当』、水まんじゅうは『チンジャオロースー弁当』をチョイス、1人と2匹でガツガツ食べる。


 実は慶応大学のみでだが、青は白達を連れてきている。


 他大学には特殊なスキルや称号を持った人はいなかったが、慶応には成長チートな奏多がいる。

 『成長の護符』持ちだからか、周りと合わなくなっていたのだ。


 だから、一般メンバーより深く潜る奏多と未来のコンビに、白と水まんじゅうを護衛につけた。


 他の男子ーズに青がついて、レベルにあった実習をこなしているのだ。


 結局青が弁当7個、白が8個、水まんじゅうが5個食べてくつろいでいると。


 「青君?」

 「ああ、藤。おはよう。」

 「おはよう。その……」

 「……?」

 「お願い、青君‼私をアメリカに連れて行って欲しいの‼」


 奏多さん、魂の叫び。


 いや、ウル○ラクイズかよ⁉️


 また騒がしい休暇が始まりそうだった。




 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る