第356話 プリンスは意外と(夢見る)乙女?

 病院と言うものは、取り違えの医療事故を防ぐため、しつこいくらいの確認をする。


 うるさいくらい名前を聞いたり、生年月日を確認する、アレだ。


 ただ、『産科』であったこと、患者そのものならともかく家族であったことから、青、取り違えられた模様。


 俊太と。


 いや、青と俊太は顔かたちもそうだが、体型だって細マッチョ(青)とレスラー体型(俊太)で、全く似てない。

 共通点は『大男』であることだが、これだって青の方が10センチくらい背が高いよ。


 でも間違えている。


 なんで?


 後で聞いた。

 連れに来た若い看護師は、メインの担当看護師では無かったらしい。

 たまに見た程度。

 『奥さんの体格のわりに旦那さんは大きいな』

 程度の認識だったので、ストンと思い込んだのだ(小春は小柄)。


 性格も多少雑らしいが……


 いくら言葉を重ねてみても、間違われた事実は変わらないよ。


 いや、なんで⁉️


 立ち会い出産って言った。

 あいつ、そんなの希望してたんだ?

 え?

 じゃあ、このままだと?


 一言、

 『人違いです。』

 と言えばいい。


 ただ、あんまりな展開に、珍しくクールな現実主義者が焦っている。

 

 焦っているから、当たり前の言葉が出ない。

 

 だいぶ馴れ馴れしい看護師に手を引かれていたが、強引に振りほどこうにも力加減を間違いそうで……


 出来ない‼️


 ……

 これ、ある意味若い女性看護師こそ、『危機一髪』な気がする。


 連れてこられた部屋のドアには、『分娩室』とか書いてあるし、正面から、別の看護師に介添えされながら、大きなお腹の小春が歩いて来てるし‼️


 「いや、俺は違っ……俺は友人で……」


 青、やっと再起動。


 必死で訴えるも、

 「嫌だなぁ、旦那さん。ここまで来てビビっちゃって。」

 と、看護師が着替え(白衣)を押し付けてくる。


 いや、この人も話を聞かない(看護師危機二髪め)。


 「あれ?青君?」


 顔をあげた小春の方が先に気付いたが、助ける間もあればこそ、

 「待って‼️話を聞け‼️

 俺はそう言うの、好きな子にとってあるんだよ‼️

 初見が友達の奥さんの出産ってなんなの⁉️」

 とやらかした。


 ……


 …………


 「「ぶっ‼️」」


 2人ほど吹き出したよ。


 小春と……

 青自身が呼び出したのだし、現れても仕方がない、けれどタイミング最悪で現れたのはひまわりと紺だ。


 とんでもない事を聞かれてしまった。


 フリーズする青の『前門』の小春は、

 「青君……勘弁……

 笑かさないで……

 出そう……」

 とか、いろいろな意味で腹を抱えているし、

 「へ?青?

 旦那さん?俊太さん?」

 カルテと、笑う小春と、真っ赤になる青を代わる代わる見て、間違いに気付いて顔色が無くなっていく看護師。


 「兄さん……」

 「あはは‼️女の子か、兄貴‼️」


 『後門』の妹ズ、ひまわりバカ笑い。


 「君達初めて同士か。大変だねぇ。」


 いや、なんてこと言うんだ、脳筋『性』女。


 紺が膝から崩れ落ち(流れ弾で顔真っ赤、尻尾も耳もペッタンコだ)、

 「あ、悪い悪い、青。

 なんとか落ち着いたよ。」

 とおっとり現れた俊太が、事情がわからないまま強めに突っ込みを食らった。


 この後、看護師さん、メチャクチャ謝ったよ(笑)



 


 

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