第354話 プリンスの友人大慌て

 そんな、騒がしかったり、騒がしく無かったりの日々の中、秋が深まり冬になる。


 青も21歳になった。


 今回の赤井兄妹フィーバーで得をしたのは物流業界だけだと思われたが、実はファッション業界も得をしている。


 青とふぁっしょん?


 いや、

 「うちのブランドのシャツを着て下さい‼️」

 「いや、うちのボトムを‼️」

 と、赤井家に、青のマンションに、妹ズの寮に送りつけても、確実に受け取り拒否で返ってくる。


 ただ、気が付いた。


 ダンジョンで、

 「どうぞ。」

 と渡せば、Tシャツならば受け取ってくれる、と。


 ……

 多分青、全てのTシャツは1000円くらいと思っている。

 数万円するのもあるんだよ。


 基本シンプルなら着てくれるし、ネタ系も意外と好きだ。


 なんでそれを貰ったのか?

 静岡県の小さなマイナー温泉、『あ○たまの湯』のオリジナルTシャツを着ていて、ネットをざわつかせたこともある。


 以後漏れなくついてくる経済効果に、Tシャツ渡しが局地的(ファッション業界のみ)に流行ったのだ。


 青、ダンジョンに出れば誰かが撮影、ネットに上がることか増えていたが……


 『今日兄貴、パタゴ○ア着てたな。』

 『……わかってないんだろうなぁ。』

 『それ、1万以上しますよ。』


 など、ネットを騒がしている。


 で、そのブランドが売れる。


 なかなかの経済効果だったのだ。


 青のキャラクターもだいぶ理解され出したし。


 閑話休題。


 12月に入ってすぐだった。


 『あーおー‼️』

 「うわっ‼️うるせえ、俊太‼️

 耳壊れる‼️」


 悪友から、早朝から鬼電食らった。


 ちょっと朝食を買いに出た、15分くらいで105回。


 ……

 いや、怖いわ‼️


 まあ、近く(コンビニ)だからとスマホを置きっ放しにする、青も大概いい加減だが。


 『青‼️来てくれよ‼️大変なんだ‼️』

 と騒ぐばかりで、全く要領を得ない。


 「うるせえ、俊太‼️

 ちゃんと説明しろ‼️」

 『小春が昨日の夜から入院してて、もうすぐ生まれるんだよ‼️』


 あ、そう言えば、小春さん、ボチボチ予定日だって言っていた。


 「俺が行ってどうなるんだよ⁉️お前の子だぞ‼️」

 『頼むよぅ。心配なんだよぉ。

 心配過ぎて、腹が痛くなってきて。』


 ???

 いや、なんで?


 『トイレにこもって付いていられないとか、最悪なんだよぉ。

 来てくれよぉ‼️』


 いや、俺が行ってどうなる?とは思ったが、無下にも出来ない。


 「わかったよ。」


 無精無精承知して、今回は行き先が病院だし、留守番になる白と水まんじゅうに、買ってきた朝食を全て献上。

 たっぷりお土産を買ってくることを約束して家を出た。


 男の自分が役に立つとは思えない。


 ちょうど週末だったこともあり、ひまわりと紺にも連絡、俊太と小春のいる産科医院を目指すのだ。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る