第353話 ダンジョンプリンセスは童話のように無力だったりしない

 さて、この手の一方的な好意を抱かれるケースは、男である青より、女である妹ズの方が多くなる。


 勝手に『俺の嫁』とか言い出す連中。


 ただでさえ『芸能人顔負け』のキレイ系だし。


 ただ妹ズ、ライブ中継された中にダンジョン反転直後の、

 『トップカウボーイぼこ殴り』事件は入っておらず、『戦える』部分がまるで伝わっていなかった。


 だから、『堕天の夢』と同じ程度の、トップ探索者がパーティーメンバーに引き抜こうと画策、実際2人を目にするところまで来て……

 回れ右、した。


 堕天さんの盾役、吉川勝馬に起こった現象が起きたのだ。


 圧倒的レベル差に、震えと涙が止まらない。


 この手の感覚は、レベルが高ければ高いほど鋭敏だ。

 でないと生き残れない。


 こうなると、『堕天の夢』の勝馬以外のメンバーが如何に自信過剰と言うか、鈍かったかわかると言うものだが、幸い彼らは回避した。


 まあ、良かった。


 これで残るは、一般人、または初級探索者の暴走タイプだけだが、

 「紺ちゃーん‼️

 お待たせ‼️迎えに来たよぉ‼️」

 と、物陰から飛び付こうとした中年一歩手前が、膝上まで凍らされて、上半身がビヨンビヨンして、急停止した。


 友人である白石とわと興梠文、ひまわりと下校中の一幕である。


 ひまわりと紺、お得意の『中二詠唱』は封印したので……

 魔法の凶悪度が増した。


 もちろん一般人相手であり、十分手加減していたが。


 「なんだ、紺。相変わらず優しいねぇ。足首までじゃないんだ。」

 からかうようなひまわりに、

 「そんなことすれば、両足折るじゃないですか、この人。」

 と、紺の方はため息混じり。


 「いや、でもかなり気持ちが悪かったから、少し強めに凍らせました。

 早めに病院行かないと、指が落ちるレベルで凍傷ですよ。」


 あ、『俺の嫁』扱い、紺、結構怒ってる。


 妄想男が慌ててジタバタ動こうとするが、縫い付けられたように動けない。

 「あ、……あ、あぁ……」

 意味の無い小さな叫びは完全に無視された。


 「えー、皆さん。」


 紺は少し声を大きくした。


 実はひまわりと紺、『気配感知』で今凍らされた彼以外に、8名ほど潜んでいると知っている。


 「皆さんが私達にどんな夢を抱いているか知りませんが、動画にはありませんでしたが私達も戦えます。」

 「兄貴に続いて、Fダンジョンの中ボス討伐者になるくらいは、ね。」


 ひまわりのセリフに、慌ててスマホを操作した妄想男ズ、驚愕。


 ラスベガスFダンジョン中ボス討伐者。

 ①  赤井青

 ②③ 赤井ひまわり 赤井紺


 マジだった……


 次の瞬間、男達の高かったり、高くなかったりする鼻先が、ビリッとした痛みと共に凍る。


 「「「⁉️」」」


 「あと、私も姉も、兄と同じ『気配感知』が使えます。

 皆さんは隠れているつもりですけど、全部わかっていますので。」

 「手加減ミスると、私だとこんがり焼いちゃうから注意してね🎵」


 「「「う、うわぁっ‼️」」」

 命が懸かっていたと知り、大概の妄想男達は逃げ出した。


 「嫌だぁっ‼️僕の女神様はそんなことはしない‼️」


 1人だけ、パニックの末突撃してきた横に大きな20代は、太ももまで凍らされて動けなくなる。


 「優しいなぁ、紺。」

 「この人、ウエイトがあり過ぎて、膝までだと大怪我じゃないですか?」

 「いっそ、もっと上も凍らせたら良かったのに。」

 「もげますよ。」

 「いらんでしょ。この人にその機能。」


 いやいや、なんてこと言い出すんだ、脳筋聖女。


 とわと文が大ウケしていた。


 通りすがりの人まで……


 男性全員、腰が引けてた(笑)

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