第345話 (13章おまけ③) ラスベガスから配信です

 ダンジョン反転は日本時間の午前中だったから……


 誰かが気が付いたのを皮切りに、波のように広がって、日本でもライブ中継が視聴された。


 「だーっ‼️何やってんだよ、青‼️」


 言葉だけなら『文句』だが、笑いが止まらない桶谷がそらや邦子に連絡。

 小春から俊太にも連絡がいき、

 「なんだよぉ‼️連れてけよ、青‼️」

 と、言葉とは裏腹な笑顔で配信を視ている。


 ちなみに俊太も英語はダメダメだから、即『相互理解のペンダント』をつけた。

 ナイス判断。


 一方ダンジョン学部では、最初に気付いたのは意外にも奏多。


 今はワイバーンさえものともしない彼女だから、普通に『週末探索者』で生きていける。

 ウィークデーは学校だか、週末だけダンジョンに潜れば学費までペイ出来るくらいだ。


 ただ、何せストイックな性格なので、それが夏休み中なら際限無く戦ってしまう。


 だから3日ダンジョンに入ったら1日休むと決めた、その日は『休日』だったのだ。


 相棒のスライムのハルカとネットサーフィンしていて、偶然見つけた。


 「えっ⁉️青君‼️」


 青が妹2人を伴って、ラスベガスで大暴れしていた。


 奏多はすぐさま、七菜、環希、未来に連絡。

 未来からは1年の葉山葉月に、葉月から弟の一月に伝わり、それぞれで配信を視聴する。


 動画は、青が何度も反転し地上に現れたダンジョンに入り、片っ端から人を助け出すシーンから始まっている。


 配信者が語っていた。


 突然ダンジョンが溢れだし、カウボーイ達にはどうすることも出来ないこと。


 急に現れた、この日本人兄妹に頼らざる得ないこと。


 そうなのだ。


 驚いたのは、今回ひまわりと紺の中学生組が、まったく顔も能力も隠していないこと。


 イギリスの時は、『謎の』存在として隠され守られていた2人が、一人前として青に並び立っていた。


 あ、また救い出した。

 白ちゃんも、水まんじゅうちゃんも大活躍だ。


 彼らが運んできた怪我人を一瞬で治してしまうひまわりは、高位の回復魔法使いである事実を欠片も隠していない。


 紺が結界でダンジョンが広がらないよう努めている。


 青が完全に認めている事実が眩しかった。


 以前会ったのは中1だからか、また美しく育っていた。


 背が高く、長い髪の日本的美少女の方は『実』の妹だからまだしも、銀髪金目のきつねの耳に尻尾の少女は、アニメの世界から抜け出たような可愛さで……


 これは無理かなぁ、と思っていた。


 何せ紺とは、恋のライバルでもある。


 ちょっとばかりの場違いな思考は、その後ショーンが登場したことで中断する。


 「ショーン⁉️

 えっ⁉️僕が原因って、そんなわけ無いじやん‼️」


 共に町田ダンジョンに行った年下の少年が、全ての責任を取ろうとする姿に慌ててしまう。


 やがてダンジョン反転は終息、青が世界初のダンジョン(中)ボス討伐者になるとすぐ、そちらの問題も片付けてくれたのでホッとした。


 なにせ、大統領まで出てきたし。


 画面の中で、ショーンが青に話している。


 ニッコリ笑った青が取り出したのは、『制御の腕輪』と、『如意槍』だ。


 「えっ⁉️」


 『如意槍』は、奏多の愛槍だ。


 それと同じで、ただしまだ使い込んでいない、まっさらな状態のそれを抱え、

 「奏多さんと同じ武器だ‼️」

 と笑うショーンの声を、ネット中継が確かに拾った。


 青は、ショーンが武器を無くしているから与えただけ、ショーンにも他意は無いだろう。


 それでも、生真面目で苦労性な年下の男の子の笑顔に貫かれて……


 「……」

 人間って勝手だ。


 そう思う奏多なのだ。


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