第343話 (13章おまけ①) 許して欲しい牛?
「嫌だぁ‼」
「おい‼」
「勘弁してくれえ‼」
「おいっ‼」
「暴力反対‼」
どの口が言う?と言うセリフを叫ぶ、キング・シャーマン・ミノタウロス・エンペラー。
いや、もう長過ぎるから『でかミノさん』で良いか。
ダンジョン反転が落ち着いて、密入国だった赤井兄妹は、大統領直々に特別滞在許可を貰うことになる。
「へー、写真までついてる。」
お気楽なのは兄だけで、
「いつの間に……?」
「抜かりないなぁ。」
と、その意味に気付いているのは妹2人。
貰ったのはアメリカのグリーンカード(永住権)だったから。
「別に他意は無いぞ。」
大統領は言う。
「どうせ『移動の翼』で飛び込んでくる、君ら探索者を防ぎようがないんだから。」
まあ、その通りのなので仕方がない。
青の決意通り、亡くなった人の数だけでかミノさんをボコるなら、今回だけの渡航では足りないし。
「で、『レベル剝奪のアンクレット』と『鑑定モノクル』を売ってもらう話は?」
「別にいいけど、俺は詳しい値段とか知らないからな。日本に聞いてくれ。」
「了解した。」
『損して得取れ』より、感覚としては『毒を食らわば皿まで』が近い。
大災害(人災)に見舞われて、それでも強かなアメリカだった。
で、翌朝ラスベガスFダンジョン(一般は立ち入り禁止中)に出向くと。
「絶対嫌だぁ‼」
叫ぶ牛が、ひっくり返って暴れていたという訳。
ま、まあ気持ちはわかるけどね。
『今から1万回以上殺します』と宣言されて、素直に受け入れる存在などダンジョン産の魔物でもあり得ない。
ラスベガスFダンジョン反転の死者数は正式には公式を待たねばならなかったが、少なくとも1万人は下らないと言われているのだ。
「往生際が悪いぞ、馬鹿牛‼」
「嫌だぁ‼拷問だぁ、こんなの‼」
「お前は人間にやらかしたことだろ⁉」
大揉めに揉める兄と牛に、
「ねえ、紺?」
「なんですか、ひまちゃん。」
「ああ言う、『ひっくり返って泣く』とかが通じるのって、幼児までだよね。」
「幼児でも可愛いかは微妙だけど、まあ。」
「デカ過ぎる牛のお化けじゃ、」
「「可愛くないよねぇ。」」
少女2名に『可愛くない』認定を受けたでかミノさん、
「大きさか!?大きさが悪いのか!?
なら‼」
と、ポンと化ける。
赤井家ダンジョンのクロさんもワンコサイズに変われたが、でかミノさんもいけたらしい。
身長130センチくらい、小学生サイズの2足歩行の牛。
が、獣(魔物?)としてそれでいいのか?のヘソ天状態、
「勘弁してぇ‼」と大騒ぎだ。
「お前、いい加減にしろよな。」
「嫌だぁーっ‼」
「戦え、馬鹿牛‼」
「絶対嫌だぁ‼」
埒が明かない、そんな時、
『すまん。勘弁してやってくれ、そいつ』と、初めて聞く声が響いた。
『完全『屈服』しちゃってるじゃないか、うちの中ボスが。』
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