第342話 青年の睡眠学習の成果

 赤井青は勉強は苦手だ。

 

 典型的脳筋、脊髄反射で思考する。


 「大統領、提案がある。」


 言うだけ言って、妹達を呼び寄せてなにやら確認。


 「なんなんだ、今のは?」

 「ああ。俺、勉強嫌いだからさぁ。」


 基本寝ていることが多かった高校での授業中、それでも微かに残っていたアメリカの社会について確認したのだ。


 「うちは下の2人の方が優秀なんだ。」

 嬉しそうに胸を張るシスコンに、

 「ん?君の語学もかなりなものと思うが?」

 と、大統領。


 事も無げに青が言った。


 「あー、俺のは『相互理解のペンダント』だよ。」

 「は?」

 「そう言う魔道具。俺は日本語しか話してないぞ。ただ魔道具の効果で、俺の言葉は英語になって伝わり、この国の人の言葉は日本語になって伝わってくる。

 楽チンなんだ。」


 「「「……」」」

 「あっ‼️でも、妹達は素の英語力だぞ‼️

 スゴいだろう‼️」


 やたら嬉しそうだけど……


 君の持つ常識外れの魔道具の方がスゴいぞ。


 余談だが、ネットのライブ放送で、青が視聴している人の国の言葉で話す現象が起き……

 この種明かしで更にザワついたことは言うまでもない。


 閑話休題。


 青の提案とは、支部長やレイドバトルの実行役である高レベルカウボーイ達に、正しい手順で裁判を受けさせること。


 アメリカは訴訟社会だ。


 夢うつつに聞いていた現社だったか地理だったか、

 『コーヒーをこぼされ火傷をした客が、数10億の賠償を得た』など、日本人的には匙加減が謎な訴訟もあるらしい。


 「この事件の加害者はアメリカと言う国だし、賠償は国家がやるんだろう?

 ただ、そこの根性無し共に非がなかった訳じゃない。

 努力することを怠って、知るべき情報は思い込みで知らず、驕り高ぶって他人の意見を聞かなかった。

 そこは怒られるべきなんだ。」


 だから訴訟を受けさせるべきと、青は言う。


 賠償なり、罰金なりで、私財は失うかも知れないが、

 「そこをいい加減にするなら、そんな連中が調子に乗ってる国なんて、ショーンとトーマスは生き辛いだろ。

 出来ないなら日本に連れてくよ。」

 と言い切られ、大統領に是非もない。


 「わかった。約束する。」

 頷くと、赤井青も大きく頷き返してきた。


 プラス、訴訟が終わり何らかの形が付くまでは、『制御の腕輪(+)』を付けることが提案された。


 「あれ?ミスター、それは?」

 「ああ、ショーンは知ってるか。そう、『制御の腕輪』。

 レベル100くらいまでなら力を押さえられるけど、そこにうちの最強付与術師にいろいろ付与して貰って……

 200ちょっとまでは制御出来るよ。」


 つまり、処遇が決まるまでの間、

 『一般人として過ごせ』と言うことであり、

 『頭を冷やせ』と言うことだった。


 支部長以下カウボーイ達も、これを撥ね付けるほど厚顔無恥にはなれなかった。


 「ミスター。」

 「ん?」

 「僕にも(+)のついた腕輪を貰えますか?」

 「?

 別にお前はいらないんじゃ?」

 「いえ、武道の修行に使います。

 これがあれば、しばらくは大丈夫ですよね。」


 ショーンは今レベル90(ダンジョン反転で2つ上がった)。

 

 長く修行に使える。


 そう言うことだ。


 小さなカウボーイは、また前を向き歩き出す。


 「いいよ。」

 と、青が笑う。


 

 

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